最新記事
自然災害

サンゴ×「ハチの巣」でハリケーンに勝つ!? 米国防総省も注目の「護岸プロジェクト」とは

Reef Rehab

2024年7月24日(水)15時31分
ジェフ・ヤング

サンゴの研究の様子

COURTESY OF THE UNIVERSITY OF MIAMI ROSENSTIEL SCHOOL

気候変動への対処が必要

シーハイブの実験は、米国防総省やその傘下にある防衛先端技術研究計画局(DARPA)からの助成金のおかげで、規模を拡大することができそうだ。

DARPAの助成対象となった研究の中には、インターネットのように社会に幅広い影響をもたらしたものも少なくないが、サンゴと波消しは、軍事とは懸け離れた印象だ。


「この種のプロジェクトの資金源としては確かに変わっている」と、リアマンは言う。だが軍事施設は沿岸部にもあるため、気候変動によって激しさを増した暴風雨は国防上の問題でもある。「海軍基地や空軍基地が暴風雨で大きな被害を受けることもあるから、彼らも施設を守りたいのだ」

シーハイブのようなプロジェクトには、海辺の町の防災力を高める効果が見込まれるとリアマンは言う。そして彼は、自分たちの研究が、サンゴが(ある程度まで)地球温暖化に適応する一助になれるのではとの希望を持っている。

だが一方で、それだけでは解決にならないとも感じている。「気候変動の原因に対処できなければ、サンゴのゲノム操作や(暑さに強い)種の選別といったことをどれほどやっても意味はない」と、リアマンは言う。

気候学者たちは、地球温暖化によってハリケーンは今よりさらに強くなるし、海水面の上昇が続けば、フロリダ州南部の都市や集落がどうなるか予断は許さないと警鐘を鳴らしている。しかも、サンゴ礁は世界で最も気候変動の影響を受けやすい生態系だ。

「残された時間はあまりない。だから素早く、断固たる決意で行動する必要がある」と、リアマンは言う。「それでもまだ希望はあると、私は今も思っている」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

海自と米海軍が共同訓練、空母ジョージ・ワシントンが

ビジネス

日銀、中立金利の推計公表しない見通し 利上げは経済

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、景気敏感株に物色 トヨタ自

ビジネス

日鉄が中期計画、30年度に実力利益1兆円以上 設備
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中