最新記事
アメリカ

観光客向け「ギャングツアー」まであるロサンゼルス...地図に載らない危険な境界線はどこか

2024年7月4日(木)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ロサンゼルスにある廃墟となったグラフィティだらけの超高層ビル

ロサンゼルスにある廃墟となったグラフィティだらけの超高層ビル Matt Gush-shutterstock

<ストリートには「見えない線」が引かれ、人種差別と暴力がはびこる不穏なエリアが形成されていった。20世紀初頭から始まる、ロサンゼルスのストリート・ギャングによる犯罪の歴史を紐解く(その1)>

日本のヤクザ、イタリアのマフィア、そしてアメリカのギャング。彼らは日常に溶け込みながらも、「見えない境界線」をめぐり、争いを繰り広げている。

外から見ればまったく分からない境界線も、そこに暮らす人々にとっては死の境界線とも言うべき厳格なもの。相手の陣地に一歩踏み込んでしまえば、暴力がはびこる恐怖の顔を見せる。

そもそもは自分たちの身を守るために張られた境界線が、今や街の負の遺産になってしまったのか。「アメリカのギャングの首都」たるロサンゼルスの歴史を紐解きながら、境界線の移り変わりをたどってみよう。
『世界は「見えない境界線」でできている』
境界線によって、どのように分断されているのか、なぜ分断が必要なのか。

2つのウクライナ、ベルリンの壁、国際日付変更線、マラリア・ベルト、バイブル・ベルト......世界各地に存在する、国境とは異なる「見えない境界線」を探った『世界は「見えない境界線」でできている』(マキシム・サムソン著、かんき出版)から、「ロサンゼルスのストリート・ギャング」の項を抜粋し、3回に分けて紹介する。

本記事は第1回。

◇ ◇ ◇

ロサンゼルス、華やかな街の裏の顔「ギャングの首都」

「泥の都」(フロリダ州ベル・グレイド)や「失踪者の港」(ワシントン州アバディーン)ならまだしも、「アメリカのギャングの首都」は、米国で最も不吉な都市のニックネームだろう。

ロサンゼルスと言えば、すぐにハリウッドや料理、ビーチ、穏やかな気候を連想するが、ギャング同士が抗争を繰り返し、人種差別と暴力がはびこる裏の顔があることでも知られている。そうした邪悪な面は、音楽、ビデオゲーム、テレビなどで美化して描かれる。

いまは、このだだっぴろい大都会のあまり知られていない場所を探索する「ギャングツアー」にも参加できる。多くのギャングは、この街を訪れる観光客の鼻先で活動しているのだが。

昼間は人気のカップケーキ・ベーカリー、高級ブティック、流行りのコーヒーショップが立ち並び、のんびりした地域(ネイバーフッド)と思われている街の一部は、夜間は恐ろしい縄張り(フッド)に様変わりする。なかには運から見放されたような地区も存在する。そこは昼間でも「邪悪(ダーク)」でミステリアスな場所とされ、名は知られているが、実際に目にするのはニュースでだけだ。

ストリート・ギャングと縁の深い地域で暮らしている人は、地元の地理の込み入った事情を強く意識しており、「安全な場所」と「危険な場所」を分ける境界に敏感だ。その境界を見きわめるのはかなり難しいが、自分自身や所属するギャングの縄張りを主張する落書き、壁画が手がかりになる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ホワイトハウスの大宴会場計画、1月にプレゼンテーシ

ビジネス

中国の24年名目GDP、134.8兆元に下方改定

ワールド

ウクライナ巡る米との交渉、ゆっくり着実に進展=ロシ

ビジネス

小売販売額11月は前年比1.0%増、休日増と食品値
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中