最新記事
気候変動

2030年には6億人が飢餓状態に、国連機関トップが警告

2024年7月29日(月)11時40分
ベネズエラのマラカイボでスープを飲む子ども

7月24日、国連の国際農業開発基金(IFAD)のアルバロ・ラリオ総裁は、気候変動による影響と金融・政治双方の怠慢のために、2030年の時点で6億人近い人々が飢餓状態に陥るとの見方を示した。写真はベネズエラのマラカイボでスープを飲む子ども。6月12日撮影(2024年 ロイター/Gaby Oraa)

国連の国際農業開発基金(IFAD)のアルバロ・ラリオ総裁は、気候変動による影響と金融・政治双方の怠慢のために、2030年の時点で6億人近い人々が飢餓状態に陥るとの見方を示した。

ラリオ総裁は、世界の飢餓・栄養状態に関するIFAD報告書の発表を前にトムソン・ロイター財団のインタビューに応じ、国連が持続可能な開発目標(SDGs)に掲げた2030年までの飢餓克服が未達成に終われば、アフリカのような人口増加地域を中心に、やむをえぬ移民の増加、新規雇用の減少、資源をめぐる紛争の深刻化が生じるだろうと述べた。

IFADの報告では、2022年の時点で世界人口の3分の1以上に当たる約28億人が健康的な食生活を送れていないとしている。

また、そのうちの70%以上は低所得諸国の住民だ。

報告書は、食糧安全保障が改善されておらず、健康的な食事へのアクセスに格差があるせいで、2020年代末の時点で5億8200万人が慢性的な栄養失調に陥る可能性があり、その半数以上がアフリカの人々だと指摘している。

ラリオ総裁は「2030年の時点で約6億人が慢性的栄養失調に陥るという事態を真剣に避けたいのであれば、一刻も早い措置が必要になる」と述べ、「やるべきことは分かっている。要するに政治的な意志があるかないかという話だ」と続けた。

IFAD報告が示した結論は、現在ブラジルで行われているG20閣僚会議における飢餓・貧困問題をめぐる議論の叩き台となるだろう。

<主要因としての気候変動>

ラリオ総裁はトムソン・ロイター財団に対し、気候変動を背景とする洪水や干ばつ、酷暑が世界中で飢餓と栄養失調を深刻化させつつあると語った。

また、気候変動の影響に対応するためのインフラの不足、過大な債務を抱えた各国財政、食糧の生産・貯蔵・流通分野に向けた気候ファイナンスの大幅な不足も原因になっていると指摘した。

これは、昨年COP28で示された国連の新たな計画にとって障害になりかねない。この計画では、地球温暖化を摂氏1.5度以内に抑えこむというパリ協定の目標を守りつつ飢餓と栄養失調に終止符を打つことを目指している。

栽培手法や肥料、貯蔵、輸送、廃棄物処理を含む食糧関連部門は、世界の温室効果ガス排出量の約3分の1を占めている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中