「核ドミノ」は避けたい...金正恩とプーチンの接近が習近平にとって「頭痛の種」な理由
Uneasy Allies
ロシアはウクライナで使用する目的で、北朝鮮からロケット弾などの通常兵器を輸入してきた。その見返りとして、ロシアは北朝鮮の軍事偵察衛星など、先進的な軍事開発を技術的に支援しているようだ。国際社会から爪はじきにされてきた北朝鮮に、食料やエネルギーも供給している。
ロシアは北朝鮮の核開発を積極的に支持している上に、北朝鮮が国防のために(それ以外の目的でも)、核を使用する「正当性」を認める。
北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)が、なし崩し的に核のハードルを下げてきたことは、ウクライナやヨーロッパのNATO加盟国に対して戦術核の使用を示唆してきたプーチンらロシア政府の強硬派にとって好都合だ。
だが、ロシアと北朝鮮がいかに接近しているように見えても、依然として北朝鮮に対して大きな影響力を持つ国は中国だけと考えられている。
中国指導部は、北朝鮮に対してほとんど影響力を持たないと繰り返すが、実際には、中国が影響力を持ちながら行使していないと言ったほうが正確だろう。これは一説には、北朝鮮の核によってアメリカの軍事力が無力化されれば、中国がアメリカに対抗する上で好都合だからだと言われる。
北朝鮮の核は、アメリカとその同盟国の北東アジアと西太平洋地域における軍事戦略の中心的課題となることにより、これらの国の対中戦略を攪乱する効果も期待できる。
「日米韓」対「中ロ朝」
ただし、中国にとって北朝鮮の核兵器は、ロシアと違って、アメリカに対する有効なカードにはならない。
確かに中国は、北朝鮮を物理的にも象徴的にも緩衝国家として、影響力のツールとして、利用したいと考えている。しかし、暴走する核保有国が隣にいるということは、中国自身の地域安全保障を著しく損なうことになる。
第1に、核による威嚇、挑発、そして「伝家の宝刀」を抜く段階に至れば、北朝鮮は中国の指揮統制に従わないだろう。北朝鮮の核兵器はアメリカ、韓国、日本を標的としているが、中国の目の前で血なまぐさい戦争が勃発すれば、中国の利益にはならない。
また、北朝鮮の指導者たちは、必要なら武力行使で中国に軍事報復することも辞さない。彼らの同盟関係はあくまで冷酷だ。
第2に、中国の安全保障上の利益は、アメリカとの覇権争いという文脈において、北朝鮮の核兵器増強によって現実的な危険にさらされている。
アメリカとしては、(まだ非公式ではあるが)急発展している日米韓3国同盟の正当な理由を得た形になる。とはいえ同盟の目的が北朝鮮の核兵器を制限するだけにとどまらないことは、今や明白だ。