最新記事
北朝鮮

「核ドミノ」は避けたい...金正恩とプーチンの接近が習近平にとって「頭痛の種」な理由

Uneasy Allies

2024年6月25日(火)13時44分
ペク・ウヨル(延世大学准教授)

習近平

習近平国家主席の中国にとって北朝鮮は戦略的「資産」であり「負債」でもある TINGSHU WANGーPOOLーREUTERS

ロシアはウクライナで使用する目的で、北朝鮮からロケット弾などの通常兵器を輸入してきた。その見返りとして、ロシアは北朝鮮の軍事偵察衛星など、先進的な軍事開発を技術的に支援しているようだ。国際社会から爪はじきにされてきた北朝鮮に、食料やエネルギーも供給している。

ロシアは北朝鮮の核開発を積極的に支持している上に、北朝鮮が国防のために(それ以外の目的でも)、核を使用する「正当性」を認める。


北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)が、なし崩し的に核のハードルを下げてきたことは、ウクライナやヨーロッパのNATO加盟国に対して戦術核の使用を示唆してきたプーチンらロシア政府の強硬派にとって好都合だ。

だが、ロシアと北朝鮮がいかに接近しているように見えても、依然として北朝鮮に対して大きな影響力を持つ国は中国だけと考えられている。

中国指導部は、北朝鮮に対してほとんど影響力を持たないと繰り返すが、実際には、中国が影響力を持ちながら行使していないと言ったほうが正確だろう。これは一説には、北朝鮮の核によってアメリカの軍事力が無力化されれば、中国がアメリカに対抗する上で好都合だからだと言われる。

北朝鮮の核は、アメリカとその同盟国の北東アジアと西太平洋地域における軍事戦略の中心的課題となることにより、これらの国の対中戦略を攪乱する効果も期待できる。

「日米韓」対「中ロ朝」

ただし、中国にとって北朝鮮の核兵器は、ロシアと違って、アメリカに対する有効なカードにはならない。

確かに中国は、北朝鮮を物理的にも象徴的にも緩衝国家として、影響力のツールとして、利用したいと考えている。しかし、暴走する核保有国が隣にいるということは、中国自身の地域安全保障を著しく損なうことになる。

第1に、核による威嚇、挑発、そして「伝家の宝刀」を抜く段階に至れば、北朝鮮は中国の指揮統制に従わないだろう。北朝鮮の核兵器はアメリカ、韓国、日本を標的としているが、中国の目の前で血なまぐさい戦争が勃発すれば、中国の利益にはならない。

また、北朝鮮の指導者たちは、必要なら武力行使で中国に軍事報復することも辞さない。彼らの同盟関係はあくまで冷酷だ。

第2に、中国の安全保障上の利益は、アメリカとの覇権争いという文脈において、北朝鮮の核兵器増強によって現実的な危険にさらされている。

アメリカとしては、(まだ非公式ではあるが)急発展している日米韓3国同盟の正当な理由を得た形になる。とはいえ同盟の目的が北朝鮮の核兵器を制限するだけにとどまらないことは、今や明白だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中