最新記事
北欧

フィンランドが「世界一幸福な国」でいられる本当の理由...国民の安全を守る「国防」の現実

2024年6月18日(火)19時43分
山田敏弘(国際ジャーナリスト)

「シェルターがあることで、生活において安全さを感じることができる」と、集合住宅の住民代表のオヤラ氏は言う。

フィンランドと違い、日本には「平和」憲法が存在する。専守防衛で、日本は戦力をもたないことで平和を維持しようとしてきたが、「幸せの国」フィンランドでは、そんな日本の防衛や安全保障へのアプローチをどう見るのだろうか。

日本の平和憲法についてストゥブ大統領が語ったこと

ストゥブ大統領が語るフィンランドの国防

日本の平和憲法についても語ったストゥブ大統領

ストゥブ大統領にそれをぶつけてみた。「(日本の)国際関係論の外交・安全保障政策に関する考えは、第二次世界大戦の経験に根ざしていると思います。ですから、比較するならドイツと日本を比較すべきでしょう。良くも悪くも両国は第二次大戦後の驚くべきサクセスストーリーだと思います。日本には平和憲法があり、同時にアメリカからの国家の安全を保障してもらえる。かなりバランスが取れていると思う」

筆者はさらに、フィンランド軍の軍事演習に参加した後に、基地内でフィンランド陸軍司令官のマッティ・ホンコ大佐とゆっくり話す機会があった。そこで、国防の現場にいる司令官に同じ質問をぶつけてみた。「日本には平和憲法があるが」と問うと、ベルギーの首都ブリュッセルのNATO本部で勤務経験があるホンコ大佐はこう答えた。「フィンランドに同じような平和憲法があれば、フィンランド軍は国を守れない可能性がある」

今回の取材では、ムーミンやサンタクロースなど穏やかなキャラクターを産んできたフィンランドで、その世界一幸せな暮らしを国防が支えていることがよくわかった。もちろん、大統領の言うように、日本とフィンランドの歴史の違いを鑑みれば、単純に比較するのは賢明ではない。だが少なくとも、日本にとっては、フィンランドが国民に与える幸福度とそれを支える包括的安全保障政策から学べることはあるだろう。日本に対して好意的な国でもあるフィンランドを、日本政府ももっと注目すべきかもしれない。

ロシアの隣国フィンランドの国防意識の高さ

国民の幸福度の高さの背景には国防意識の高さがあった(写真は船から撮影したバルト海)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中