最新記事
戦場ウクライナの日本人たち

元福島原発作業員、起業家、ピカチュウ姿のボランティア...戦火のウクライナで生き抜く日本人たちの実話

JAPANESE IN UKRAINE

2024年6月6日(木)17時00分
小峯 弘四郎(フォトジャーナリスト)

キーウに30年暮らして

1回目の渡航の時、ウクライナの支援グループを通じて紹介されたのが、日本人女性のKさんだった。ウクライナ人男性との結婚を機に1995年から30年近く、首都キーウ(キエフ)の中心部で暮らしている。

戦争が始まった当初、Kさんがとにかく困ったのが食料不足だった。ミサイルの警報サイレンが鳴ると、スーパーや商店は全て閉まり、客も全て外へ追い出される。どの店も1日数時間しか営業できない状態で、行列に並ばなくてはいけない。食料が足りず、夫と愛犬で少ない食事を分け合った。

newsweekjp_20240606024009.jpg

キーウに暮らして30年近くになるKさんと愛犬 COURTESY OF K

日本人のKさんは、もちろん逃げようと思えば逃げられた。しかし出国できない夫と犬を残して日本に行くことは考えられなかった。

「夫の支えと私自身の努力で、ウクライナ語とロシア語を覚え、日本よりも長く生活をしてきた」と、Kさんは言う。「ウクライナは私にとっては第2の故郷であり、日本での生活以上に重要になっています」

Kさんの目に映る、戦争開始後のウクライナ人の最大の変化はウクライナ語を話す人がとにかく増えたことだ。侵攻以前は多くがロシア語をしゃべっていて、むしろウクライナ語をしゃべったり勉強している人は「変わった人」という扱いを受けていた。ウクライナ語をほとんど話してこなかった高齢者は今、ロシア語でロシア批判をしている。

「300年以上にわたってロシアはウクライナを敵視し、圧迫してきました。この長い歴史を振り返ると、仲の良い兄弟でも、友好的な隣国でもないのです」と、Kさんは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

エプスタイン文書、米司法省が30日以内に公開へ

ワールド

ロシア、米国との接触継続 ウクライナ巡る新たな進展

ビジネス

FRB、明確な反対意見ある中で利下げ決定=10月F

ビジネス

米労働省、10月雇用統計発表取りやめ 11月分は1
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中