最新記事
日本社会

日本の部活動は「滅私奉公」サラリーマンを育てる隠れカリキュラム

2024年5月30日(木)15時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

データで見ても、運動部の経験と企業社会での成功可能性はつながっている。やや古いが、2012年に国立青少年教育振興機構が調査した結果によると、25~54歳の大卒男性有業者のうち、大学時代に運動部への加入経験がある者は238人、そうでない者は610人。この2つのグループの年収分布を比べると<図2>のようになる。

newsweekjp_20240530043515.png

年収が750万円を超える者の割合をとると、加入群では26.5%、非加入群では16.2%と10ポイント以上の差がある。年収が400万円に満たない者は順に32.4%、42.8%。両群の年収分布の差は統計的に有意だ。単純なクロス集計の結果だが、こういう傾向は出てくる。

企業は部活(運動部)の経験者を評価する、後者は前者が求める人材像に合致する。だが周知のように、日本の企業にはブラック労働がはびこっている。見方を変えると、学校の部活動は、滅私奉公のブラック労働を厭わない人間を育てる「隠れたカリキュラム」として機能しているとも言える。教員の「異次元の部活指導」が、こうした負の機能に加担しているとしたら皮肉なことだ。

しかし状況は変わりつつある。今後、学校の部活動は地域に段階的に移行されることになり、生徒の運動部加入率も低下の傾向だ(「中学生の課外活動は部活から地域クラブへ」2023年3月22日、本サイト)。教育は、社会の要求をくみ取り、社会を維持・再生産する機能と同時に、社会を変える機能も併せ持つ。進行中の部活動改革が、日本の企業社会の闇を変える契機になるといい。

<資料:OECD「TALIS 2018」
    国立青少年教育振興機構『子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究』(2013年)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米イラン、イスラマバード会談決裂後も対話の余地残す

ビジネス

マクドナルド、米国で新ドリンクを今月導入 クラフト

ワールド

米政権、移民判事をさらに解雇 親パレスチナ学生送還

ビジネス

豪消費者信頼感指数、4月は2年超ぶり低水準 中東紛
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 5
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 6
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 10
    BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音楽市場で…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中