最新記事
月探査船

NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

NASA Solves Moon-Crossing Object Mystery

2024年4月10日(水)16時20分
トム・ノートン

月面上空を飛ぶ未確認飛行物体? NASA/GSFC/ARIZONA STATE UNIVERSITY

NASAが、月面を横切る平たいUFOのような画像を公開。実はこれは、時速数千キロで月の上空を飛行する韓国の月探査機の画像だと明かした。

アメリカの政治家や一般市民はこのところ、宇宙熱を高めている。4月8日の皆既日食フィーバーはもちろん、昨年は、カメラが捉えた未確認飛行物体についてアメリカが把握していることを明らかにするため公聴会が開かれ、新しいグループも立ち上げられた。

【動画】北米で皆既日食、闇に包まれるナイアガラの滝、地球を覆う月の影

そんななかNASAは、月の上空を飛行する別の宇宙船から韓国の月探査機を撮影することに成功したと発表した。

15年にわたって月を周回しているNASAの月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が、2024年3月5日から6日にかけて、ほぼ平行した軌道を周回する韓国航空宇宙研究院の月探査機「タヌリ」を撮影したのだ(タヌリは2022年8月、スペースXの「ファルコン9」ロケットを使用してフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍施設から打ち上げられた)。

一連の画像は白黒で、月面を横切る汚れのようなものが映っている。LROは、LRO軌道の下8〜4キロのさまざまな距離で、タヌリを捉えることに成功した。NASAによれば、LROは月の約50キロ上空を周回している。

2機の相対速度は秒速3.2キロ

LROは2009年、NASAのゴダード宇宙飛行センターから打ち上げられた。目的は、地球から最も近い天体である月の表面を調査し、月そして地球の起源と進化に関する基本的な疑問の答えを探ることだ。今回の画像は、LROカメラ(LROC)に装備された狭角カメラが、タヌリを記録できる距離まで接近した3周回のあいだに、その瞬間を捉えた。短時間露光で撮影したものだが、タヌリの姿はぼやけており、単なる汚れのように見える。

LROカメラチームによれば、2機の相対速度は秒速3.2キロと非常に高速で、カメラを適切なときに適切な方角に向けるには「絶妙な」タイミングが必要だったという。

セントルイス・ワシントン大学の地球環境惑星科学准教授ポール・バーンはX(旧ツイッター)で、「タヌリは薄い板状の宇宙船ではなく、ごく普通の探査機だ。しかし、すごい速さで移動しているため、LROCのセンサーでは薄い汚れのようになってしまう」と説明している。

バーンは、LROチームが補正したクリアな画像もオンラインスレッドに掲載した。

なお、タヌリのほうも2023年春、LROを撮影している。約17.7キロ上を飛行するLROをカメラに収めたのだ。NASAのシャドーカムで撮影し、今回と同じようなぼやけた画像をもとに、軌道を移動するLROの高解像度シミュレーションが作成された

(翻訳:ガリレオ)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対

ビジネス

デフレ判断の指標全てプラスに、金融政策は日銀に委ね

ワールド

米、途上国の石炭からのエネルギー移行支援枠組みから

ビジネス

トランプ氏、NATO加盟国「防衛しない」 国防費不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中