最新記事
DEI

多様性の名の下で忘れ去られる「白人男性」...彼らもまた支援が必要ではないか?

ENGAGING WHITE MEN

2024年3月29日(金)19時30分
ロン・カルッチ(米コンサルティング会社ナバレント共同創業者)、ゾーイ・スペンサーハリス(米バージニア州立大学社会学・刑事法学助教)

newsweekjp_20240328035105.jpg

実際には白人男性も期待に応えられないのではないかという不安を抱き、そのために他者との関わりを拒絶することがある BOGGY22/ISTOCK

誤解される不安を克服することも重要だ。多くの白人男性が公平性や多様性、人種差別について話すことを恐れていると語る。自分が「悪者」に見られたり、自分の関心が偽善的と見なされ、救世主のつもりかと非難されるのを怖がる。

確かにそういうことはあるかもしれない。しかし難しい問題について本音で語れる場を見つけて、自分や世界について多くの発見を得られる恩恵と比べれば、そのような誤解など大したことではない。

WMRJのメンバーのダレン・サドマンは、生後3カ月の息子が突然死したのを機に、乳児突然死症候群(SIDS)の啓蒙活動を行うNPOを設立した。「確かに昔は、この活動をしていることについて、どう思われるか不安だった」と彼は語る。

全ての人が平等な世界へ

「私は昔から、誰かがのけ者にされているのを見ると、とても嫌な気持ちがした。それなのに、そうした価値観を生きる場がなかった。それが今は、好奇心旺盛で、思いやりがあり、居心地の悪い思いをすることを恐れない仲間を見つけた。気まずい思いをすることを受け入れれば、帰属意識と、これまで感じたことのない深いつながりを得られる」

「帰属とはどういうことかを知るまでは、何かに帰属しないことがいかに恐ろしいか、そして自分が他人の帰属をいかに妨げているか、気付かなかった。でも今は、排除されてきた人たち、特に私が排除してきた人たちに対して、もっと共感と思いやりを持てるようになった」

自分が所属する会社や学校や組織が、歴史的に疎外されてきた集団のためにチャンスを設けることに、憤りを覚える白人男性は少なくない。それは自分たちのチャンスを犠牲にしてつくられていると感じるのだ。

だが、よく目を凝らすと、そこで是正されようとしているのは、それまでほとんどの機会がまず白人男性に与えられてきた事実であることが分かる。彼らが喪失感を覚えるのは理解できる。しかし長い目で見れば、それは全ての人にとって平等な世界に至るための一歩なのだ。そこには白人男性も含まれている。

人種的不平等は、あらゆる人を非人間的に扱うことだ。そのピラミッドの頂点にいるからといって、白人男性が制度的な人種差別のダメージを避けられるわけではない。競争のフィールドを平坦にする努力を早く始めるほど、公平性という果実を早く享受することができる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、25年の鉱工業生産を5.9%増と予想=国営テ

ワールド

日銀幹部の出張・講演予定 田村委員が26年2月に横

ビジネス

日経平均は続伸、配当取りが支援 出遅れ物色も

ビジネス

午後3時のドルは156円前半へ上昇、上値追いは限定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中