最新記事
DEI

多様性の名の下で忘れ去られる「白人男性」...彼らもまた支援が必要ではないか?

ENGAGING WHITE MEN

2024年3月29日(金)19時30分
ロン・カルッチ(米コンサルティング会社ナバレント共同創業者)、ゾーイ・スペンサーハリス(米バージニア州立大学社会学・刑事法学助教)

newsweekjp_20240328034918.jpg

写真はWMRJのダレン・サドマン DARREN SUDMAN

私たちが出会ったのは3年前。重要な社会的実験であり、コミュニティーとしても機能する活動団体に、カルッチがメンバーとして、スペンサーハリスが顧問として加わったのがきっかけだ。

今は「人種平等を支持する白人男性(WMRJ)」という名のこの団体には創設以来、アメリカ各地の白人男性400人以上が参加している。活動の焦点は、週単位のカリキュラムやコミュニティー体験を通じた学習と、知識の問い直しを目的とする学習解除。団体が誕生した背景には、2つの重要な前提がある。

第1に、非白人の人々は白人、特に白人男性に「やるべきことをやる」よう求めてきた。啓発という重荷を非白人に押し付けず、白人男性ならではの特権や権力について自ら時間をかけて学んでほしい、と。

第2に、白人男性が自身の生活や体験を進んで検証し、人種差別が構造化した社会制度に必要な変化について考えるには、同じ問題に関心を抱く白人男性の仲間と一緒に取り組むことが、より効果的だ。

DEIの文脈では、「ビロンギング」は時に、少数派がより大きな集団の中に存在可能であるという意味でしかない。だが実際には、この言葉の定義は、ジェンダーや人種的アイデンティティーに左右される。帰属意識は社会的アイデンティティーと密接に結び付いていると考えるよう、私たちは条件付けられ、帰属意識の強化を求めて自分と同様の人々に目を向ける。

しかし帰属意識とは、誰かが誰かに「行う」ものではない。排除されがちな人々を受け入れることは行動として可能だが、それだけで包摂性は実現しない。多くの場合、そうした行為は「お情け」と感じられ、当然ながら帰属感は生まれない。

真の帰属意識とは、条件を問わない人間同士の深い絆だ。自己検閲も、話す内容や話し方を変える必要も、迎合する必要も感じずに、安心して「もろい自分」でいられる。階層やジェンダー、人種の相違がそれほど問題にならず、尊厳や思いやりが当たり前のことになる。それは純粋なつながりであり、誰かのためにではなく、誰かと共につくり出すものだ。

ジェンダーに対する固定観念では、男性は理性的で論理的で、強い存在とされる。その結果、傷つきやすさや感情表現が社会的に許されない。

そのせいで、白人男性は孤立し、近年ではメンタルヘルスの問題が急増している。一方、多くの人は富や地位、権力を握り続ける彼らに共感するどころか、少数派をめぐる対話に招き入れる気にもなれない。だが真の意味での帰属意識と切り離せない「弱さ」を、白人男性が受け入れることをより難しくしているのは、こうした文化規範だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国万科の元建て社債が過去最安値、売買停止に

ワールド

鳥インフルのパンデミック、コロナ禍より深刻な可能性

ワールド

印マヒンドラ&マヒンドラ、新型電動SUV発売 

ワールド

OPECプラス、第1四半期の生産量維持へ=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中