「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち

THE MIND OF A CAT

2023年12月28日(木)17時26分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

231114P18NW_NKO_04v2.jpg

ハンガリーの動物行動学者ポングラッツ教授 PONGRACZPORTRE3

長いこと猫の研究は、ペット界のトップスターである犬の後回しにされてきた。昨今のブームには、1990年代~2000年代に行われた犬の認知研究に刺激された面もある。

90年代以来、犬の内面を調査する研究施設が世界各地で誕生した。

研究者たちは人間の感情やシグナルを読み、抽象概念や社会力学を理解する犬の能力を測定し、人間との関係の核となる「犬は本当に私たちを愛しているのか」といった問いに答えを求めた。

近年になって猫を愛する新世代の研究者が犬の実験手法を借用し、その成果をヒントに研究に着手。猫にまつわる誤解を解き、飼い主を悩ませてきた疑問に答えを出している。

孤独が好きで人間が嫌いというイメージとは裏腹に多くの猫が複雑な社会集団の中で生き、人に対して深い愛着を抱く能力を持っていることが分かったのも、こうした研究の成果だ。

また猫は一般に思われているよりずっと賢い。

多くの個体が自分の名前を理解し、飼い主の声を聞き分け、顔を認識する。家の規則やスケジュールを覚え、人間が発する複雑なシグナルや初歩的な指示を理解し、限られた情報から結論を導き出す。

何より猫と人間の絆は双方向で、人間の思い込みではなく本当に存在し、長続きすることを示す証拠が次々に出ている。

研究によれば、猫は人間に好意を持っている。それどころか、私たちを愛している。犬に比べて愛情表現が分かりにくいだけなのだ。

犬をかわいがるのは簡単だ。犬はあふれんばかりの愛で私たちを圧倒する。抱き付き、顔をなめ、尻尾を振り、無視されれば眉根を寄せたりクンクン鳴いたりして、私たちといるのがうれしいことを表現する。

一方で、人間と猫の関係はそう単純ではない。

なで回されたり耳の後ろをかかれたりしても、一部の猫はじっと我慢するだろう。だが猫というのは得てして偉そうで、私たちの愛情に無関心に見える。まるで自分たちのほうが飼い主で、少しでも関心を向けてもらえるならありがたく思えと言わんばかりだ。

しかも飼い主が旅行で留守をしたりすると、腹いせにソファに小便をする。腹がすけば、悪魔のような手口で寝ている飼い主を起こそうとする。コップを倒し、飼い主に水を浴びせる猫の動画を、YouTubeで見たことがあるかもしれない。

それでも猫は犬と同じように人間の家庭生活の奥の奥まで入り込み、家族の一員となることに成功した。この能力自体が大がかりな研究に値する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米下院、エプスタイン文書公開義務付け法案を可決

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中