最新記事
キャリア

日本の文系大学院卒の就職率が学部卒より低いのはなぜか?

2023年11月1日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

ちなみに大学院に進むことで就職率がどう変わるかは、男女でかなり異なる。横軸に学部卒、縦軸に大学院修士卒の就職率をとった座標上に、各専攻のドットを配置すると<図1>のようになる。青色は男子、赤色は女子のドットだ。

data231101-chart02.png

斜線は均等線で、この線より上にある場合、学部卒より院卒の就職率が高いことになる。<図1>を見ると、斜線より上にあるのは男子の5専攻と女子の1専攻だけだ。女子の場合、院卒の就職率が学部卒を上回るのは理学しかない。

それ以外は斜線より下で、女子の人文科学と社会科学は隔たりが大きい(緑枠)。女子にあっては、この2専攻の大学院に進むと就職率が大きく下がる。人文科学は81%から45%、社会科学は86%から52%という具合だ。「学のある女は要らぬ」ということなのか、この性差も看過できない。

大学院では、きちんと資料やデータを収集して問題を深く探究する能力が身につく。それは文理を問わない。社会が大きく変わる中(AIの台頭など)、新たな法制や倫理を打ち立てる必要に迫られているが、文系専攻者のこうした能力は大いに役に立つ。企業の側はもっと目を向けるべきだ。大学院の側も、教育内容や得られる能力に関する情報発信を分かりやすい形で行わなければならない。両者の歩み寄り、すなわち産学連携が求められるゆえんだ。

<資料:文科省『学校基本調査』(2022年度)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日米豪印が外相会合、トランプ政権発足直後に中国けん

ビジネス

EU一律の新興企業ルール導入を、米への流出阻止=欧

ビジネス

イスラエル、債務残高の対GDP比率が69%に上昇 

ワールド

議事堂襲撃事件、大統領恩赦で大量釈放、世論調査60
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 8
    トランプ新政権はどうなる? 元側近スティーブ・バノ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中