なぜ日本が協力? 「古代エジプト博士ちゃん」が聞く、大エジプト博物館の魅力
環子さんの夢と、JICAの願い
松永 環子さんは、自分で古代の方法を調べて魚のミイラをつくったとか。今日お持ちいただいていますが、研究熱心で驚きました。
環子 はい。哺乳類のミイラは難しいので、魚屋さんでイナダを買ってもらって、ミイラにしました。棺と重要な臓器を入れるカノポス壺は粘土でつくりました。臓器は人間だと肺などを入れるのですが、魚だったのでエラを入れています。
河合 すごいね。僕はミイラはつくったことがないから、抜かされちゃったな。
松永 今、中学1年生で、ここまで自分で調べ上げて実践するなんて、素晴らしいです。環子さんは将来考古学者になって、叶えたいことがあるそうですね。
環子 「差別のない社会」「平和な世界」「地球に優しい生活」という3つのテーマがあり、この3つは連鎖していると思っています。古代エジプトと今の世界では時間の流れや文化、宗教や習慣は全然違います。でも、同じ人間なので失敗もするし、間違いもします。むしろ、その間違いを認めて改善できればいいと思います。先ほど、遺物の修復でも「相手を尊重する」というお話がありましたが、お互いの違いを認めて大切なものを守ったり、地球温暖化など現代ならではの環境問題解決のヒントを見つけられたりしたらいいと思います。
松永 考古学者という夢の先に、グローバルな視点も持っていてすごいですね。私の所属するJICAも国際協力を通じて差別のない社会、平和な世界を構築しようとしています。環子さんの夢はJICAの願いでもあります。
河合 私も今日は感服しました。環子さんが古代エジプトのことを調べることで、現代人が失ったものがいろいろと見えてくるでしょう。そして、お互いの文化や歴史的な背景を理解したうえで一緒にやっていくことが、将来の夢につながってくると思います。近い将来、ぜひ一緒にエジプトで活動しましょう。ツタンカーメン王妃・アンケセナーメンのお墓はいまだに発見されていません。もしかしたら、環子さんが発見するかもしれないね。
一つの展示品にも隠された努力とドラマが
エジプトへの熱い想いが尽きることのなかった今回の対談。大エジプト博物館に展示・収蔵される数々のツタンカーメンの遺物には、日本の保存修復技術がいかんなく発揮されています。実際に大エジプト博物館に足を運んで、展示品一つひとつの背後にあるエジプト人と日本人の修復にかけた熱い想いと苦労のドラマに思いを馳せる──。その日を楽しみに待ちたいですね。