最新記事
エジプト

なぜ日本が協力? 「古代エジプト博士ちゃん」が聞く、大エジプト博物館の魅力

2023年10月11日(水)10時30分
※JICAトピックスより転載

大エジプト博物館とラムセス2世の巨像

(左)クフ王のピラミッドが見える砂漠の東京ドーム約10個分という広大な敷地に建つ大エジプト博物館(右)エントランス広場でラムセス2世の巨像が迎えてくれる

松永 今まで一度も展示されていないツタンカーメンの秘宝も展示されるんですよね。期待が膨らみますね。

環子 その中でもイチオシは何ですか?

河合 推しですか? それは難しい、全部です(笑)。でも、やはりツタンカーメンの棺ですね。棺はいくつあるか知っていますか?

環子 3つです。

河合 そう、3つです。今まで3つ揃って展示されていなかったのですが、大エジプト博物館では棺も黄金のマスクも一堂に会します。それからクフ王のピラミッドの南側から見つかった2隻の「太陽の船」も展示される予定です。

環子 ツタンカーメンの遺物といえば、以前、日本の展覧会で「チャリオット」という戦車のレプリカを見ました。今回の修復作業中に屋根付きだと分かったそうですが、屋根が付いた状態で展示されるのですか。

河合 本当は屋根がついた状態で展示できるといいんですが、3000年以上も経って劣化しているので難しいんです。そこで屋根と本体を3次元レーザーでスキャニングして、バーチャルリアリティの映像で展示予定です。この新しい展示方法は、JICAの協力のおかげで実現できるんです。

河合望

河合望(かわい・のぞむ) 金沢大学古代文明・文化資源学研究所所長、教授。30年以上にわたりエジプト現地での発掘調査や保存修復プロジェクトに従事。2016年から大エジプト博物館の保存修復プロジェクトに携わる

第1の太陽の船

カイロのエジプト考古学博物館から大エジプト博物館に移送される第1の太陽の船。現在修復・復原業中の第2の太陽の船と並んでの展示が予定されている

チャリオット

乗り物に屋根がついた最古の例だというチャリオット(戦闘用の二輪馬車)。しかも屋根(写真右)は傘のように折り畳める仕様だ。VR技術により、来館者はスマホやタブレットの画面を通して屋根がついた状態を見られる予定

エジプトと日本の信頼関係で合同修復を実現

環子 世界にはいろんな国があるのに、どうして日本がエジプトの博物館を支援しているのですか?

松永 大変良い質問ですね。この質問には私からお答えします。1900年ごろにフランスやイタリアの協力でカイロのエジプト考古学博物館が建てられたのですが、100年経って老朽化が進み、新しい博物館を作ろうという話が持ち上がりました。そこで日本にリクエストがあったんです。

環子 エジプトから支援のリクエストがあったのですか。

松永 国際協力っていうと、アフリカなどの発展途上国の草の根に入って支援するJICA海外協力隊が挙げられるかもしれません。ほかにも、橋や発電所などのインフラを整備するなど、途上国の経済を発展させていこうとする活動がありますが、この大エジプト博物館のように、外国の文化を支援して大切な「宝物」である遺物を後世に伝える協力を行うことも、大切な国際協力の仕事の一つなんですよ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中