地球温暖化とどう向き合う? データと行動で希望を語る「エコリアリスト」に聞く

HOPE ON CLIMATE CHANGE

2023年9月22日(金)13時00分
ダン・ハーリー(サイエンスライター)

230912P18KHD_02.jpg

大雨で道路が冠水(7月11日、バーモント州モントピリア) KYLIE COOPER/GETTY IMAGES

リッチーによれば、中国で今年導入される太陽光パネルは、アメリカに設置されているパネルの総量を上回る見通しだ。加えて、中国で昨年販売された自動車の3台に1台は電気自動車(EV)だったという。この割合は、20年には15台に1台にすぎなかった。

5年前に悲観的な予測を示していた人たちが見通せなかったのは、世界で再生可能エネルギーへの転換が進むペースの速さだ。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、商業レベルの太陽光発電の発電量当たりのコストは、10年から21年の間に88%低下した。発電コストは、陸上風力発電で68%、洋上風力発電でも60%下がっている。

目を見張る再エネシフト

米エネルギー情報局(EIA)によると、目覚ましいコスト低下を背景に、アメリカでは昨年、再生可能エネルギーの発電量が石炭火力発電を初めて上回った。アメリカの発電所がつくり出す電力に占める石炭火力発電の割合は、この10年間で半減し、19.5%まで低下している。

世界全体の石炭消費量も、13年を境に減少に転じたとみられている。以前の予測では、石炭消費量は21世紀末まで増え続けるとされていた。

5年前にはほぼ予測できていなかった展開がもう1つある。それは、世界中でEVの販売台数が飛躍的に増加したことだ。世界の道路を走っているEVの台数は、20年の1000万台から3000万台に跳ね上がった。昨年、世界のEV販売台数は前年比で60%増えている。

しかも、EV革命はまだ始まったばかりだ。米環境保護局(EPA)はこの4月、自動車メーカーがアメリカ国内で販売する新車の3分の2以上をEVとするよう求める規制案を発表した(昨年のアメリカの新車販売台数に占めるEVの割合は5.8%にすぎなかった)。

再生可能エネルギーへの転換が進み、温暖化に歯止めがかかれば、好影響は極めて大きいと考えられる。

地球の平均気温が産業革命前より5度上昇した場合、海水面は90センチ程度上昇するとも予測されているが、気温上昇が2度の場合は、海水面の上昇が30センチ程度に収まる可能性がある。また、平均気温が3度高くなれば、干ばつが続く期間は平均10カ月長くなるとみられるのに対し、気温上昇が1.5度なら、その期間は2カ月にとどまるという。

動植物への影響も見落とせない。平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度に抑えられれば、脊椎動物の8%が現状の生息域の半分以上を失う。しかし、平均気温の上昇が4.5度に達すると、その割合は42%になるという。植物の場合、この割合はそれぞれ16%と68%だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政府、大規模人員削減加速へ 最高裁の判断受け=関

ビジネス

ECB追加利下げ、ハードル非常に高い=シュナーベル

ビジネス

英BP、第2四半期は原油安の影響受ける見込み 上流

ビジネス

アングル:変わる消費、百貨店が適応模索 インバウン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中