地球温暖化とどう向き合う? データと行動で希望を語る「エコリアリスト」に聞く
HOPE ON CLIMATE CHANGE
まだ「世界の終わりではない」
だが、もしも実は気候変動による世界の終焉が差し迫ってはいないとしたら? 未来についての長期的見通しが最近、従来よりはるかにましになっているとしたら?
そう問いかけるのは、新しいタイプの気候活動家、自称「エコリアリスト」たちだ。彼らは政府や産業界、一般市民による過去数年間の前向きな行動が従来の予測をはるかに上回っていると指摘。もちろん、まだ十分ではないものの、大勢の人々が希望を失わず前向きに行動すれば、メリットを拡大できるという。
「気候変動について私たちにできることが何もないのなら、落ち込んだり諦めたりして当然だ。だが未来は自分たちが握っていると気付けば、状況は変えられる。それが私たちの希望のよりどころだ」と、エコリアリストの1人である米環境保護団体「自然保護協会」のキャサリン・ヘイホー主任研究員は言う。
エコリアリストは気候変動が現実ではないと言っているわけではない。世界の終わりを予感させるニュースが飛び交うなかで、希望を持てと言うほうが難しいのは確かだ。
例えば国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は今年3月の報告書で、産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5度以内に抑えるという目標値を2030年代前半に突破する可能性が高いと発表。「全ての人々・生物にとって生存可能で持続可能な未来への扉は急速に閉ざされつつある」と主張した。
一方、エコリアリストたちは過去5年間で別の傾向が表れていると指摘する。19年時点では多くの気候学者が、今世紀末には世界の平均気温は産業革命前から5度近く上昇し、世界の広範囲が居住不能になると予測していた。しかし今では、グリーンエネルギーの使用が以前は考えられなかったほど劇的に増加したおかげで、上昇幅は約2.5~3度程度と、いくらかましになる見込みだ。
エコリアリズムの急先鋒がハナ・リッチーだ。オックスフォード大学が運営するアワ・ワールド・イン・データ(世界の変化をデータで読み解くウェブサイト)の主任研究員で、新著『世界の終わりではない』でも持論を展開している。
「記録的な猛暑と山火事と洪水が続くなかでも、最悪の気候変動を避けられるかもしれないという一筋の希望の光が見えてきている」と、リッチーはワシントン・ポスト紙への最近の寄稿で記した。「温室効果ガス排出量と石炭消費量が世界最大の中国が、再生可能エネルギーへの転換を猛烈なペースで進めている」