最新記事
教育

全国学力調査から見えてくる、地域内の「学力格差」

2023年9月20日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

あと一つ、内部格差の指標として、中央値と第1四分位値(Q1)がどれほど隔たっているかをみてみる。後者は下位25%の値だ。先ほどと同じく、按分比を使って出せる。

・按分比=(25.00-19.45)/(25.65-19.45)≒0.896
・Q1値=7.00+(1.00×0.896)≒7.90問

正答率のQ1値は、16問中7.90問正答ということで49.38%。先ほど出した中央値は、このQ1値の1.393倍となる。この指標をもって、内部格差の規模を測る指標とみなす。

この2つの数値を都道府県別に算出し、高い順に並べた表を作成した。それぞれの上位10位、下位10位を抽出すると<表2>のようになる。左欄は中央値で、右欄は中央値がQ1値の何倍かだ。

data230920-chart02.png

左側は県全体の水準だが、大よそ当局公表の平均正答率の結果と一致している。右側を見ると、内部格差が最も大きいのは沖縄県となっている。子どもの貧困が影を落としているのかもしれない。

対して秋田県や北陸の3県は内部格差が小さい。自宅での勉強時間を見ても、中ほどが多い「山型」になっており、大都市圏で見られるような「分極型」にはなっていない。全体の底上げがなされている。

当局が公表する平均値でよしとせず、元の(未加工の)分布表にまでさかのぼってみると、新たに見えてくることがある。他の官庁統計についても言えることだ。

<資料:文科省『全国学力・学習状況調査』(2023年度)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、短期過熱感を嫌気 日米交渉へ

ワールド

豪住宅価格は6月も最高更新、利下げ効果で5カ月連続

ビジネス

農業を犠牲にしない、安心して再生産できる環境重要=

ワールド

アングル:アマゾン販売の中国製品がCPI上回る値上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中