最新記事
ウクライナ戦争

これはもはやジェノサイド...ウクライナを歴史から抹消、若い血をロシアに移植──連れ去りとロシア化教育にみるプーチンの野望

GENOCIDAL INTENT

2023年8月1日(火)12時50分
アジーム・イブラヒム(米ニューライン研究所シニアディレクター)

「ロシア化」されるウクライナ

ウクライナ文化の存在自体を否定したいという願望は強いものだった。16年3月、RISSのアナリストのオレグ・ネメンスキーは「ウクライナ住民の大多数はウクライナ文化とは無関係」と主張。この世界観では、存在するのはロシア文化のみで、ウクライナ住民には彼らが自分たちの文化だと主張するものとの接点は全くない。

これらがことごとくウラジーミル・プーチン大統領に影響を与えた。プーチンは21年7月、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題する論文で、両者は「一つの民族」と明言。「現在のウクライナ人はソ連時代の産物」であり「ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップにおいてのみ可能だ」と書いた。ウクライナの政府と国民があくまで国家の独立性と文化の完全性にこだわるなら、彼らはネオナチだとも主張した。

22年2月のウクライナ侵攻直後からロシア軍はウクライナ文化の弾圧を開始。占領地の街頭に掲げられたウクライナの国民的詩人タラス・シェフチェンコの肖像は引き裂かれるか覆い隠された。町名標識はウクライナ語からロシア語表記に、色もウクライナ国旗の青と黄からロシア国旗の白・青・赤に塗り替えられた。

同年9月、プーチンはドネツク、ルハンスク(ルガンスク)、ヘルソン、ザポリッジャの4州をロシアに併合することを一方的に宣言。その際の演説で、過去8年間にわたりプーチン政権とその政策を支配してきたジェノサイド的主題に立ち返った。「自らの文化、宗教、伝統、言語によって自分をロシアの一部だと見なし、先祖代々、何世紀にもわたって統一国家で暮らしてきた何百万もの人々の決意ほど強いものはない。真の歴史的祖国へ戻るという彼らの決意ほど強いものはない」

ロシア軍の占領地域(現在は撤退中)で実施された偽りの住民投票の結果、そこで暮らす人々はウクライナ人ではなくなった。ロシア政府から見れば、彼らはロシア人であり、そうでないと主張する人々はナチス、もしくは頭がおかしいとされる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米財務長官、鉄鋼・アルミ関税縮小の決定は「トランプ

ワールド

米政権がアリババや百度を中国軍支援企業リストに追加

ワールド

上院銀行委、ウォーシュ氏のFRB議長指名公聴会で前

ワールド

米国防総省、イラン情勢にらみ中東に空母増派へ 最新
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 6
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 7
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    やはりトランプ関税で最も打撃を受けるのは米国民と…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中