最新記事
税負担

この四半世紀でほぼ倍増した若年世代の税負担率

2023年8月16日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
税負担の増加

高齢化社会のしわ寄せは若年層により多くのしかかっている takasuu/iStock. 

<各世帯の税金や社会保険料の負担率はすべての年代で増加しているが、特に20代以下の負担増が大きい>

国民は税金を払っているのだが、その額を意識する機会は少ない。サラリーマンが受け取る給料は税引き後のものだし、店舗での表示価格も税込みになっていて「痛税感」を感じにくい。税率変更のニュースに大きな関心が持たれることもない。

厚労省の『国民生活基礎調査』に、世帯の所得と可処分所得の分布が出ている。最新の2022年のデータをもとに中央値を計算すると、前者は427万円で後者が328万円。差し引き99万円を税金や社会保険料として納めている計算で、当初の所得に占める割合は23%。おおよそ4分の1を持っていかれていることになる。

1996年では、持っていかれる割合は15%で、この四半世紀で税負担が増しているのが分かる。少なくなった可処分所得から、重みが増した消費税を払って日々の買い物をしなければならない。国民の生活は全体的に苦しくなっているわけだ。

年齢層別にみると、看過できない傾向が出てくる。<表1>は、世帯主の年齢層別に所得と可処分所得の中央値を算出し、税負担などの割合を出したものだ。

data230816-chart01.png

どの年齢層でも稼ぎは減っていて、かつ負担は増している。筆者の年代の40代では、15.3%から24.3%と10ポイント近く上がっている。介護保険(被保険者は満40歳以上)ができたことにもよるだろう。

若者はもっと悲惨で、持っていかれる率は17.7%から30.4%へとほぼ倍増だ。20代の世帯の可処分所得は、2022年では234万円。学生時代に奨学金を借りている人も多くなっているが、少なくなった手取りから奨学金も返さなければならない。当然、結婚も難しくなる。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中