中国の大卒者を襲う超就職氷河期...その戦犯は? 若者の失業率は近年最高に
Too Many Diplomas
江蘇省淮安で開かれた就活フェアに殺到する今年度卒業生(7月1日) CFOTO/AFLO
<激増する高学歴若年層の失業率は最悪水準に、政治的論理で大学を拡張した国家の「罪と罰」>
中国経済が新型コロナのパンデミックのどん底から回復しているにもかかわらず、公式発表による中国の若年労働力人口の失業率はぞっとするほど高いままだ。今年5月の16~24歳の若者の失業率は、近年最高の20.8%に達した。
一方、今夏の卒業シーズンの大学新卒者総数は過去最多の1158万人。となれば、就職市場への圧迫が悪化するのは確実だ。
減速気味とはいえ広範な経済回復と、圧力を受け続ける若年雇用というギャップは、労働市場の不均衡な構造の反映であり、経済改革のペースをはるかに超える速度で大学教育拡張を推し進めた結果だ。大学卒業者にとって魅力的なサービス産業の成長を伴わないまま、学士号取得者だけが過剰に増えれば、中国の生産性低下は止まらないだろう。
皮肉なことに、中国近代史上で最も教育水準が高い今の若者世代は、彼らを吸収し切れない経済の中で行き場をなくし、国家の重荷になる一方のようだ。だが、これは驚くべき話ではない。大学拡張の主な目的は、教育そのものの充実とは無関係だったからだ。
中国政府が1999年に高等教育の大幅拡張を決定したのは、労働力改革を見据えてのことではない。大きな目的は、輸出市場の停滞に対処することにあった。
アジア金融危機に直面していた当時、政府は景気の刺激策として、新たなキャンパスを建設した。インフラバブル到来前の中国では、敷地や施設を要する大学の建設は刺激策として格好の存在だった。
同時に、WTO(世界貿易機関)加盟に向けて、当時の中国国有企業では大量解雇が進行していた。既に雇用市場が収縮するなか、高等教育の拡張は高卒者を別の進路に振り向ける方策でもあった。
将来的な大卒者の就職難の兆候は2000年代前半に表れていたが、高等教育の規模拡張の動きは過熱した。00年代後半には、拡張のための支出のせいで、多くの大学が多額の負債を抱えていた。
大学拡張の是非をめぐっては、背景にあった政治的論理があらゆる検討材料を圧倒した。その結果、中国の高等教育機関の合格率は98年には約34%だったが、21年には93%近くに急上昇。10年にわずか26.5%だった進学率は、22年には60%に迫った。
高等教育ブームは、ホワイトカラー職である都市部の管理・プロフェッショナルサービス部門の就職競争を激化させた。こうした分野は中国の経済成長の主役ではなく、雇用数にはもともと限りがある。