最新記事
中国

中国の大卒者を襲う超就職氷河期...その戦犯は? 若者の失業率は近年最高に

Too Many Diplomas

2023年7月27日(木)16時10分
佟皓宇(ワシントン在住リサーチアナリスト)

社会主義を標榜する国家にもかかわらず、教育を受けた者に肉体労働はふさわしくないとする根強い儒教的考えや地域格差も、大都市でのオフィスワークが好まれる傾向に拍車をかけている。

成長率アップのため製造業を強化する中国のおなじみの手法は概して、大卒者の期待に応える雇用機会を十分に生み出していない。生産現場や建設現場を拡大しても、教育のある若者にとって理想の就職先とは言えない。

受け皿がない経済構造

公式統計によると、農業などの第1次産業を除く中国の総雇用数のうち、ブルーカラー職が占める割合は21年当時でもおよそ70%に上っていた。ホワイトカラー職の不足を解消するには、成長が比較的遅れているサービス部門を、政府が支援する必要がある。

世界銀行の報告では、21年の中国のGDPにサービス業が占めた割合は53.5%。世界平均(64%)より低く、アメリカ(77.6%)を大きく下回る。サービス部門で続く中国の貿易赤字は、この相対的なビハインドの反映だ。

中国では11年以降、サービス部門が最大の雇用源になっているが、主な牽引役はデリバリーや配車サービスだ。こうした非正規かつ労働集約型のギグワーク(単発の仕事)も大卒者は避けたがる。

構造的不均衡を悪化させているのが、経済に大きな影響を与えた近年の政策転換だ。

それなりの経済成長が見込まれ、知的職業の需要が高かったパンデミック以前は、プラットフォームビジネスや学習塾、不動産開発企業が新卒者を大量に雇い、若年失業問題をある程度緩和していた。だがこの2年間、3部門はそろって規制強化の対象になり、雇用は先細りしている。

その一方で、国家が経済の中核部門を掌握する現実は、高学歴労働力の活用の妨げになっている。

中国教育省によれば、18~20年の金融学士号取得者は年間100万人を超えた。だがひと握りの国有銀行が支配する中国の金融システムには、それだけ多くの新卒者を受け入れられるだけの企業の数や多様性がない。

求めるのは熟練労働者

外国企業や私有企業に厄介な規制を課す中国の金融分野はあまりに閉ざされ、野心的な大勢の若者のために十分な機会を創出できない。さらに、経済的逆風に伴うデレバレッジ(過剰債務削減)路線によって、中国の銀行はデフォルト(債務不履行)リスクや弱い借り入れ需要、損失に直面している。いずれも、雇用創出をむしばむ要因だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中