最新記事
EC

69兆円の中国ライブコマース市場は進化できるか? 値引きや有名人頼みから脱却目指す

2023年7月3日(月)07時37分
ロイター

中国の巨大な電子商取引市場をけん引しているのは、ライブ配信と販売活動を融合させた「ライブコマース」だ。写真は李佳琦氏とviya氏の2021年12月のライブ配信(2023年 ロイター/Florence Lo)

中国の巨大な電子商取引市場をけん引しているのは、ライブ配信と販売活動を融合させた「ライブコマース」だ。今年5月、そこに参入したアップルは番組で大幅な値引きはせず、有名な司会者も用意しなかったが、大変な反響を集めることができた。

それぞれの商品の専門家たちが「iPhone(アイフォーン)」を使った動画制作方法や、フィットネスに役立つ「Apple Watch(アップルウオッチ)」の使い方を紹介すると、1時間で30万件の「いいね」をもらい、130万人の視聴者を呼び込んだ。

これは中国のライブコマースが急激に進化していることを物語る。価格面での「大安売り」を柱に据えたのが当初のビジネスモデルだった。しかし市場が細分化し、いわゆる「スーパー司会者」の起用でコストが跳ね上がる中で、有力ブランド企業の間でライブコマースの主導権を確保しようとする動きが強まっているというわけだ。

さまざまなブランドの美容関連品小売りを手がけるボニー・アンド・クライドのウィリアム・ラウ最高経営責任者(CEO)は「プロモーションではなくコンテンツに移行しなければならない。40%値引きするよりもコンテンツの確立に注力すれば、消費者からの反響はもっと大きくなり、売上高もついてくる」と指摘した。

調査会社eマーケターによると、昨年中国でライブコマースを通じた小売売上高は4800億ドル(69兆円)に達した。今年は経済全体が苦境に陥っているにもかかわらず、そこからさらに30%増加する公算が大きく、ライブコマースの足場がいかにしっかりしているかが分かる。

中国屈指のスーパー司会者の1人は、「口紅王子」の異名を持つ李佳琦氏。アリババグループ傘下の「天猫(Tモール)」でトイレットペーパーから家電製品まで視聴者に最も安い価格を提供している。「何てことだ、是非買わなくては」が商品を勧める際のお決まりの台詞だ。

この李佳琦氏とTモールの影響力はなお大きい。ただ幾つかのブランド企業は大幅値引きへの依存から、「ストーリーを伝える」方向に戦略転換を図りつつある。

北京の電子商取引コンサルティング会社WPICマーケティング・プラス・テクノロジーズのジェイコブ・クック共同創業者兼CEOは「ブランド各社は、外部の司会者を雇ってライブ配信で得た収入の4割から5割を支払うのではなく、独自のチャンネルを立ち上げている」と述べた。

クック氏によると、李佳琦氏の配信にかかる費用は、商品紹介の専門的な訓練を受けた司会者を中国の代理店を通じて派遣してもらう場合の約30倍にもなり、「持続不能(なモデル)」だという。

女性服ブランド「ba&sh」のアジア太平洋責任者ゼフィール・リュー氏は「商品と司会者のキャラクターの相性がぴったりなら、消費者は本当に使っているのだと信じてくれる。彼らは司会者が本心から勧めているか、ただ売ろうとしているかを見定めている」と説明した。

リュー氏は以前は、およそ2000元(約4万円)という同社商品の価格帯は大バーゲンを行うライブコマースにはそぐわないと考えていた。

しかし中国版TikTok(ティックトック)と呼ばれる動画投稿サイトの「抖音」で、代理店派遣の司会者や「そこそこ」のインフルエンサーを使って販売をしてみた結果、ライブコマースは定価を提示しても効果があることが判明した。

リュー氏は、配信中に視聴者と司会者が直接対話し、サイズや色味などの問い合わせにすぐ答えられるのがプラスだったと話す。

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続

ワールド

トランプ氏、有権者ID提示義務化へ 議会の承認なく
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中