最新記事
中国軍

もはや性能はアメリカ製と同等...中国が台湾の空に続々と送り込む「軍事用ドローン」、その真の狙いとは?

DRONES TARGET TAIWAN

2023年6月15日(木)17時19分
オリ・ペッカ・スオーサ(アラブ首長国連邦ラブダンアカデミー助教)、エイドリアン・アン・ユージン(シンガポール南洋理工大学ラジャラトナム国際研究大学院研究員)

中国軍がドローンを運用するのは、今に始まった話ではない。以前から遠く南シナ海や東シナ海にまで偵察用のドローンを飛ばしてきた。日本と領有権を争う尖閣諸島(中国側の呼称は釣魚島)にも、頻繁にドローンを出没させている。

ではなぜ、いま台湾なのか。露骨な武力攻撃の一歩手前の、いわゆる「グレーゾーン」で台湾を威嚇する作戦の一環とする見方もある。また4月27日と5月2日の台湾本島「周回」については、中国が空から台湾を包囲できる能力を誇示し、台湾側の対応能力を探る目的だったという指摘もある。

偵察や監視に加えて、ドローンによる要人暗殺やインフラ攻撃の可能性を指摘するアナリストもいる。確かにアフガニスタンや中東、アフリカなどでは、そうした目的でドローンが使われた例がある。

しかし、その多くは対空反撃能力を欠く地域でのことだ。台湾のような場所にドローンを飛ばして要人の暗殺を試みるという話は、およそ現実的ではない。2019年にホルムズ海峡で、米軍の大型ドローンがイランの革命防衛隊に撃ち落とされた例もある。

ウクライナ戦でも、バイラクタルのような大型ドローンが前線で有効に機能したのは初期段階だけで、ウクライナ領内に陣地を構えたロシア軍が防空体制を整えると、攻撃用ドローンの出番は減った。

米軍のドローンとほぼ同性能

アメリカやオーストラリア、日本などの国々と同様、今の中国はむしろ洋上での作戦行動にドローンを活用している。中国製のBZK005、TB001などはアメリカ製のMQ9B「シーガーディアン」やMQ4C「トライトン」とほぼ同等の性能を持ち、洋上の巡視や捜索・救助、潜水艦の監視、情報収集や信号傍受などの任務に当たっている。高性能のセンサーを備えた大型ドローンなら広大な海域を監視でき、しかも30~40時間の連続飛行が可能だ。

BZK005が爆撃機の先導役として用いられることもある。台湾国防部は1月9日、BZK005がH6爆撃機を先導しててルソン海峡から西太平洋へと飛行したとする飛行データを公表している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米メーシーズ、第4四半期利益が予想超え 関税影響で

ワールド

ブラジル副大統領、米商務長官と「前向きな会談」 関

ワールド

トランプ氏「日本に米国防衛する必要ない」、日米安保

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中