欧米学生向けの闇代筆バイトに従事するケニアの若者、ChatGPTに駆逐されるか?
数学の学位を身につけたランガットさん(30歳)は7年前、ケニアの中級レベルの大学を卒業した後、統計関連の仕事に就きたいと願っていた。だが、計画通りには進まなかった。ナイロビ市内で7日撮影(2023年 ロイター/Thomas Mukoya)
数学の学位を身につけたランガットさん(30歳)は7年前、ケニアの中級レベルの大学を卒業した後、統計関連の仕事に就きたいと願っていた。だが、計画通りには進まなかった。
政府機関で統計に携わったり、高校で数学を教えたりする夢を断たれたランガットさんは、全く違う「アカデミック・ライティング」の世界に飛び込む。聞こえは良いが、つまりは「不正行為の請負業」だ。
アカデミック・ライター、すなわちケニアの若い大卒者らは、主に欧米の裕福な学生に代わってエッセーを書いたり、宿題をしたり、場合によっては試験を受ける仕事を請け負っている。
この闇産業で働くケニア人の数や、その収入について信頼に足る統計は存在しない。
ランガットさんは「相手との合意によって異なるが、だいたい学生1人当たり月額200ドルないし300ドルを受け取っている。ほとんどは、看護や医療についてのエッセーの執筆だ」と語った。「2018年以来、約30人の学生を助けてきた」という。
この仕事への需要は過去10年間に膨れ上がった。ランガットさんによると、はるか昔から市場は存在したという。「関係者は秘密にしていて、何をやっていたのか具体的には語らない」という。
今年初めからAIが闇市場を侵食
ランガットさんは今、こうしたゴーストライターの仕事が人工知能(AI)に取って代わられることを恐れている。
昨年誕生した対話型AI「チャットGPT」は、ユーザーの指示に応じて記事やエッセー、ジョーク、ひいては詩まで作り出してしまう。
オンライン学習プラットフォーム、スタディ・ドット・コムが今年1月に1000人以上の学生を対象に実施した調査によると、89%以上が宿題でチャットGPTの助けを借りたことがあると答えた。試験や在宅での問題の回答にチャットGPTを利用したと認めた割合は48%、エッセーを書かせた割合は53%、論文の素案を書かせた割合は22%だった。
これら全てが、ケニアの闇産業を侵食した。
調査によると、ゴーストライターの収入は経験や仕事量などによって月4000―200万ケニア・シリング(29―1万4524ドル)と大きなばらつきがある。
ランガットさんは「今年の初め、だれもが一斉にAIを利用し始めたため、がっくり収入が減った」と話す。