学歴格差が引き起こす残酷なネガティブスパイラル
最近、お金欲しさで闇バイトに手を染めるといった困窮型の犯罪が増えているというが、生活に困っている者の割合も学歴によって違う。<図1>は、30~40代の中年層を最終学歴で3つの群に分け、日々食べることにも困る暮らしをしている人の割合をグラフにしたものだ。
色がついている部分が、過去1年間に「飢え」を経験した者の割合で、義務教育卒では61.1%、中等教育卒では27.5%、高等教育卒では16.7%となっている。明瞭な差だ。義務教育卒のグループでは、「しばしばあった」という著しい困窮状態の者も16.7%いる。この群は対象者全体の中で4.4%とマイノリティーだが、見えにくい「豊かさの中の貧困」という現実があることに、思いを馳せなければならない。
高度経済成長期の1960年頃までは、同世代の半分ほどが中卒で社会に出ていたが、現在では半分が大卒だ。企業も好んで大卒を採るようになっているが、職務遂行に必要な技能水準が上がったためではない。「間違いのない人を採りたい」という思惑から、大卒学歴をフィルターとして使っているだけのことだ。
よくよく考えれば、同じ仕事なのに学歴で給与に差を付けたり、職業への参入障壁として学歴を用いたりすることに合理的な根拠はない。採用活動のコストを低減するためのフィルターとして学歴に依存し過ぎることは、不当な差別を生むことにもなる。社会の機能的必要とは無関係に教育は自己増殖し、自立のためのハードルが高まり(教育費高騰)、結果として少子化が進むことにもなる。
現に不当な差別により困窮している低学歴層には支援の措置が講じられるべきで、学び直しの機会の提供も求められる。近年、夜間中学の設置が進んでいることの背景には、こういう問題意識もある。既存の高校や大学も、こうした学び直しの機能を強化するべきだ。