最新記事
教育

パソコン・スマホを学習に使う時間が長いほど、子どもの学力が下がるのはなぜか

2023年5月17日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
デジタル端末を使った授業

デジタル端末を授業で使うのは日常の光景になったが Drazen Zigic/iStock.

<デジタル機器は、授業や学習の効率を高める反面、思考力を奪ってしまう危険性もある>

教育において、ICT(情報通信技術)機器の活用が推奨されるようになって久しい。「1人1台端末」のGIGAスクール構想はほぼ実現し、デジタル教科書を使う学校も増えてきた。授業では、子どもが端末と向き合う光景が日常となっている。

勉学においてもICT機器は使われているようで、2022年度の『全国学力・学習状況調査』によると、小6児童の73.9%が「普段、勉強のためにスマートフォンやパソコンなどのICT機器を使う」と回答している。デジタル教科書の使用、調べもの、レポートの作成、といった用途だろう。

情報化社会を生き抜く「情報活用能力」を育む上でも好ましいが、気になるデータがある。ICT機器の利用時間と、教科の平均正答率の相関関係だ。上記の調査によると、小6児童の国語の平均正答率は65.8%だが、普段、勉強のためにスマートフォンやパソコンなどのICT機器を1日3時間以上使うグループに限ると54.6%。全児童の数値よりも明らかに低い。

ICT機器の利用時間別に教科の平均正答率を出し、線でつないだグラフにすると<図1>のようになる。左は小6児童、右は中3生徒のデータによる。

data230517-chart01.png

予想に反してというか、利用時間が長い群ほど正答率が低い傾向にある。機器を持たない、使わない群は家庭の経済力が低い等の理由が考えられるが、これらを除くと、利用時間が長いグループほど正答率が低い傾向が見られる。どの教科においても、だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中