極右と極左の呉越同舟──多すぎて複雑な「反プーチン派」の正体について
Homegrown Rebels
Jonas Petrovas-shutterstock
<親プーチン派ブロガー暗殺など、ロシア国内で破壊行動が相次いでいる。国内外に多数のパルチザンが存在しているが、ロシア政治の道筋を変えることは簡単ではない理由とは?>
ロマン・ポプコフは、ロシアで極左と極右の両方の運動に関わった。その後、民主主義の価値に目覚めて力を入れ始めたのが、ウラジーミル・プーチン大統領を武力で打倒することを目指す活動だ。
反プーチンの活動によって収監された後、ポプコフは2011年にウクライナの首都キーウ(キエフ)に移住した。彼にとって過去最大の成果は、今年4月にロシアのサンクトペテルブルクのカフェで、ロシアの国家主義の軍事ブロガー、ウラドレン・タタルスキーが殺害された事件だろう。
ポプコフはウクライナの情報機関の名の下に暗殺者を雇い、タタルスキーの殺害を手助けしたとささやかれている。
筆者が所属するフォーリン・ポリシー誌は、暗号化されたチャットを介して、長時間にわたりポプコフを取材した。彼はタタルスキー殺害の容疑者ダリヤ・トレポワを、ロシアのウクライナ侵攻に反対する「英雄」とたたえた。
ポプコフは事件への自身の関与について、肯定も否定もしなかった。だが自らが所属する反プーチン派ネットワーク「ロスパルチザン」が「プーチンのプロパガンダ拡散役であり、戦争犯罪者であるタタルスキーの粛清」に関与したことは認めている。
ポプコフは、ロシア国内のほかの反プーチン派組織の協力があったとも語った。事件後には、元ロシア下院議員のイリヤ・ポノマレフが代表を務める反プーチン派組織「国民共和軍(NRA)」も犯行声明を出している。
ポプコフは、プーチンを打倒できるのはロシア人が率いるゲリラ活動だけだと主張する。ヨーロッパに亡命したロシア人による非暴力的な抗議は効果がなく、偽善的でもあると一蹴した。
「私たちはウクライナで、ロケット攻撃にさらされて暮らしている。ロシアにいる同志たちは、命と自由を危険にさらして独裁政治と戦っている」と、ポプコフは言う。
「しかしヨーロッパに政治亡命したロシア人は、カフェでおしゃべりしているだけだ」
アメリカは関与を否定
昨年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ロシア国内では各地で謎の攻撃が起きている。爆発物によって列車が脱線し、電線が吹き飛ばされたこともある。クリミア半島とロシアを結ぶ橋は爆破で大きく損壊し、軍の徴兵事務所に火炎瓶が投げ込まれる事件も相次いだ。
これらの攻撃には、複数の反プーチン派組織が犯行声明を出した。だが、これらの組織の正体は? どれだけ強力なのか? ウクライナや西側からの支援を受けているのか?