最新記事
ロシア

極右と極左の呉越同舟──多すぎて複雑な「反プーチン派」の正体について

Homegrown Rebels

2023年5月16日(火)13時09分
アンチャル・ボーラ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)
プーチン

Jonas Petrovas-shutterstock

<親プーチン派ブロガー暗殺など、ロシア国内で破壊行動が相次いでいる。国内外に多数のパルチザンが存在しているが、ロシア政治の道筋を変えることは簡単ではない理由とは?>

ロマン・ポプコフは、ロシアで極左と極右の両方の運動に関わった。その後、民主主義の価値に目覚めて力を入れ始めたのが、ウラジーミル・プーチン大統領を武力で打倒することを目指す活動だ。

反プーチンの活動によって収監された後、ポプコフは2011年にウクライナの首都キーウ(キエフ)に移住した。彼にとって過去最大の成果は、今年4月にロシアのサンクトペテルブルクのカフェで、ロシアの国家主義の軍事ブロガー、ウラドレン・タタルスキーが殺害された事件だろう。

ポプコフはウクライナの情報機関の名の下に暗殺者を雇い、タタルスキーの殺害を手助けしたとささやかれている。

筆者が所属するフォーリン・ポリシー誌は、暗号化されたチャットを介して、長時間にわたりポプコフを取材した。彼はタタルスキー殺害の容疑者ダリヤ・トレポワを、ロシアのウクライナ侵攻に反対する「英雄」とたたえた。

ポプコフは事件への自身の関与について、肯定も否定もしなかった。だが自らが所属する反プーチン派ネットワーク「ロスパルチザン」が「プーチンのプロパガンダ拡散役であり、戦争犯罪者であるタタルスキーの粛清」に関与したことは認めている。

ポプコフは、ロシア国内のほかの反プーチン派組織の協力があったとも語った。事件後には、元ロシア下院議員のイリヤ・ポノマレフが代表を務める反プーチン派組織「国民共和軍(NRA)」も犯行声明を出している。

ポプコフは、プーチンを打倒できるのはロシア人が率いるゲリラ活動だけだと主張する。ヨーロッパに亡命したロシア人による非暴力的な抗議は効果がなく、偽善的でもあると一蹴した。

「私たちはウクライナで、ロケット攻撃にさらされて暮らしている。ロシアにいる同志たちは、命と自由を危険にさらして独裁政治と戦っている」と、ポプコフは言う。

「しかしヨーロッパに政治亡命したロシア人は、カフェでおしゃべりしているだけだ」

アメリカは関与を否定

昨年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ロシア国内では各地で謎の攻撃が起きている。爆発物によって列車が脱線し、電線が吹き飛ばされたこともある。クリミア半島とロシアを結ぶ橋は爆破で大きく損壊し、軍の徴兵事務所に火炎瓶が投げ込まれる事件も相次いだ。

これらの攻撃には、複数の反プーチン派組織が犯行声明を出した。だが、これらの組織の正体は? どれだけ強力なのか? ウクライナや西側からの支援を受けているのか?

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派

ワールド

アングル:ルーブルの盗品を追え、「ダイヤモンドの街

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円で横ばい 米指標再開とFR

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中