最新記事
ウクライナ戦争

ウクライナ戦争はいつまで?「3年目が見えてくる」その理由 小泉悠×河東哲夫

THE END OF AN ENDLESS WAR

2023年4月11日(火)19時45分
小泉 悠(軍事評論家)、河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)、ニューズウィーク日本版編集部
朝鮮戦争

ウクライナ戦争は休戦までに3年かかった朝鮮戦争に似ている INTERIM ARCHIVES/GETTY IMAGES

<すでに1年続いている戦争だが、これからどうなるか。朝鮮戦争は3年で休戦になったが......。日本有数のロシア通である2人が見る、ウクライナ戦争のこれからの展開>

※本誌2023年4月4日号および4月11日号に掲載の「小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析」特集、計20ページに及ぶ対談記事より抜粋。対談は3月11日に東京で行われた。聞き手は本誌編集長の長岡義博。

【動画で見る】ウクライナ戦争の「天王山」と知られざる爆破陰謀論(小泉悠×河東哲夫 対談)

――最後の質問です。1年続いた戦争は終わる気配が全く見えない現状ですが、戦争の見通しについて改めて分析していただけますか。

■河東 先ほども言ったように、急に終わる可能性は少ないわけです。これまでのいろいろな戦争を見てみると、例えば英仏間の百年戦争なんていう例もあります。600年ぐらい前の戦争だけれども、ウクライナ戦争と結構似ていて、これは100年断続的に続いた。

あとは(19世紀の)クリミア戦争。クリミア戦争こそよく似ているのですが、ほとんど引き分けで終わった。戦争末期の形勢が悪いときに、ロシアのニコライ1世は死んでいるんです。

それから、第2次大戦の初めの頃のフィンランド戦争。フィンランドがものすごく抵抗してソ連軍に被害を与えたんだけれども、結局多勢に無勢で負けて、領土をずいぶん失う形で停戦した。

次は朝鮮戦争ですね。スターリンが始めて、中国はスターリンに引きずられて義勇軍を出した。出したら勝ったから、続けてやろうと思ったらスターリンが死んで、結局停戦に至った。朝鮮戦争はスターリンが死なないと終わらなかったかもしれない。ウクライナで考えると、プーチンがいなくなるか、ゼレンスキーがいなくなるか。

もう1つはアメリカの大統領選挙がどうなるか。昨日、シリコンバレーの大きな銀行が破産しましたけども、あれがアメリカ金融危機につながれば、アメリカもウクライナ戦争どころじゃなくなるでしょう。いろいろな要素があるけれども、基本的には長引くだろうとは思います。

■小泉 軍事的側面について言うと、両方とも戦争を継続する能力がある。人間の補いは動員でついていて、ロシアの兵器生産が止まってないのはさっきお話ししたとおり。

ウクライナは西側からかなり大規模な軍事援助を受け続けられている。あとウクライナ軍がもともと持っている旧ソ連製の大砲のために旧ソ連規格の口径の弾を造るとか、1年やってだんだん態勢ができてくるので、純軍事的に戦えてしまうんでしょう。

そうすると、お互いがもうこれ以上は物理的に戦闘継続できない、軍隊が消耗し切ってこれ以上は戦争が続けられないという状況までいかないと、なかなか政治フェーズに入っていけない。その意味では今の東部での戦いとか、今年の春から秋ぐらいにかけて、地面がまだ固まっていて大規模な戦闘ができる時期に予期されているウクライナ軍の反攻の形勢が、まず直近では影響を及ぼしてくると思います。

おそらく今年の秋ぐらいまでの形勢が、そのまま来年初頭まで持ち越される。来年春ぐらいになると、またぞろ大規模な軍事行動が、という話になってくるので、やはり3年目がどうしても見えてきてしまう。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中