最新記事
フランス

極右に「2つのプレゼント」をした、マクロンの賭け

France Is Erupting

2023年4月3日(月)08時55分
ヘンリー・グラバー
マクロン大統領

Yves Herman-REUTERS

<議会の採決を経ずに首相が強行採択できるという「奥の手」で年金改革法を通したことに国民は猛反発。それでも強行した背景とは?>

フランスの大統領には、長いこと任期制限がなかった。連続2期までという制限ができたのは2008年のこと。

ただ、その後のニコラ・サルコジ大統領とフランソワ・オランド大統領は1期(5年)で退陣したから、この任期制限がかかるのは、22年4月に再選を果たした現職のエマニュエル・マクロン大統領が初めてだ。

アメリカなどでは、任期末期に近づいた大統領は政治的影響力が衰えて、レームダック(死に体)などと揶揄されることがあるが、マクロンの任期は27年まである。それに、もう再選を目指す必要がないから、一般に不人気な政策を断行する意欲も大きくなる。

年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げることなどを柱とする年金改革法の実現は、まさにそれに当たる。

マクロンが設立した政党「再生」(旧称・共和国前進)などの連立与党は、国民議会(下院)での議席数が過半数を下回っており、かねてから難しい議会運営を強いられてきた。国民の約75%が反対している年金改革法案に支持を取り付けるのは、当然ながら至難の業だ。

左派政党は明確に協力を拒み、極右政党「国民連合」を率いるマリーヌ・ルペンは、4年後の大統領選に勝利したら、この改革を撤回すると断言した。

昨年の総選挙で年金制度改革を唱えていた右派の共和党も、支持を拒否した。通常の採決では可決できそうにないと判断したマクロンは、エリザベット・ボルヌ首相に年金改革法案の強行採択を指示した。

フランス憲法49条3項によると、社会保障関連の法案は、議会の採決を経ずとも首相が強行採択できることになっている。

年金制度は崩壊寸前だが

こうして3月16日に年金改革法は成立したが、これで一件落着とはいきそうにない。フランス全土で労働組合が激しい抗議行動を展開している。

石油精製業者やゴミ収集業者のストライキにより、ガソリンスタンドに1時間待ちの行列ができ、パリの街角に大量のゴミ袋が放置されている。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:ダボス会議「トランプ・ショー」で閉幕、恐怖と

ビジネス

緊張感をもって市場の状況を注視=為替で片山財務相

ワールド

マクロスコープ:衆院選あす公示、勝敗左右する与野党

ワールド

インドネシア西ジャワ州の地滑り、死者17人に 73
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中