デモ隊に放水銃の攻撃、ジョージア「ロシアそっくり法案」はなぜ今だったのか
Georgians Lean West
放水をかわすデモ参加者(首都トビリシで) IRAKLI GEDENIDZE-REUTERS
<NGO弾圧法案が議会に提出され、市民が大規模デモで抗議。法案は取り下げられたが、国民の大多数がEU・NATO加盟を求めるこの国で、民主主義の空洞化が進んでいる>
放水銃で攻撃され、よろけながらもEU旗を振り続ける若い女性。彼女が転ばないよう支えたり、彼女をかばって放水を受ける仲間たち(※記事末の動画参照)。
それは3月7日と8日、ジョージアの首都トビリシで起きた警察隊と数千人のデモ参加者の衝突を象徴する光景だった。
焦点になっていたのは、活動資金の20%以上を外国から得ている団体を「外国の代理人」として登録することを義務付ける法案だ。
10年前にロシアでそっくりの法律が導入され、NGOや独立系メディアの弾圧に使われた。それが7日、ジョージア議会でも審議が進んだ(編集部注:その後9日に取り下げられた)。
かつてソ連の一部だったジョージアは、ロシアと国境を接しながらも、一時は強力な親欧米路線を取っていた。ところが近年の政治には、ロシアの影がちらつく。
それでも国民の大多数はEU・NATO加盟を希望している。最近の世論調査では、EU加盟支持が75%、NATO加盟支持が69%に達した。
それだけに一般市民の間では、ロシアに対する警戒感が強い。2012年にロシアで外国代理人法が施行されたときは、多くの市民団体が活動休止に追い込まれた。
2021年には、ロシアの人権団体メモリアルが最高裁から解散命令を受けた(メモリアルは2022年にノーベル平和賞を受賞)。
ジョージアでも同じことが起こるのではという危機感が、トビリシでの大規模デモにつながった。
「(外国代理人法を)葬り去るために、社会全体が結束した。皆ロシアで起きたことを知っているからだ」と、トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)ジョージアのエグゼクティブディレクターを務めるエカ・ギガウリは語る。
「ウクライナでは戦争が起きているが、ジョージアでもロシア的統治との戦いが起きている」
ちらつくロシアの影
近年、ジョージアの民主主義は、空洞化が目立つようになった。国家権力の抑制と均衡が乏しくなり、与党「ジョージアの夢」が異例の存在感を示すようになった。
その設立者である大富豪ビジナ・イワニシビリは現在、公職には就いていないが、舞台裏から政府に大きな影響を及ぼしていると広くみられている。
そんななかで外国代理人法が採択されれば、ジョージアの民主主義は大きく後退していただろう。当局は、市民団体や独立系メディアに嫌がらせをしたり、ひょっとすると黙らせたりする強力な権限を手にすることになるからだ。