もう一つの隣国ジョージアで「ロシア化反対」の大規模デモ
Protests ignite in another of Russia's neighbors
ジョージアの民主派は、この法案が通れば、EU-NATOとより密接な関係を築くことは困難になると警戒している。ジョージアは、ロシアがウクライナ侵攻を開始した直後の昨年3月、EUに加盟を申請した。NATOとも長年協力関係にあり、NATO加盟にも前向きだが、ロシアを挑発する恐れがあるため、今のところ申請には至っていない。
ウクライナやモルドバと同様、ジョージアもロシアとの領土問題を抱えている。ジョージアの領土の約20%を占める南オセチアとアブハジアは、2008年にロシアが分離独立の動きにテコ入れするため本格的な軍事介入に踏み切って以来、ロシア軍の占領下に置かれている。
トビリシの大規模デモは、2014年にウクライナの「マイダン革命」につながったデモに驚くほど似ている。この革命では、西側との関係強化に自国の未来を託す人々が、親ロ派のビクトル・ヤヌコビッチ大統領の政権を転覆。これがロシアのウラジーミル・プーチン大統領の逆鱗に触れ、ロシアのクリミア侵攻、されにはウクライナ侵攻につながったとみられている。
トビリシでのデモの直前には、モルドバの首都キシナウも緊迫ムードに包まれた。ウクライナ西部との国境地帯に横たわるモルドバ東部の親ロ派地域・沿ドニエストル地域には約1500人のロシア兵が駐留している。EUに加盟申請をしているモルドバ政府は、プーチンが武力で自分たちを失脚させ、傀儡政権を打ち立てる計画を練っているとの情報を入手し、ロシアに駐留部隊の撤退を求めた。
EUは7日、ジョージア議会で審議中の問題の法案について、「EUの価値観と基準とは相容れない」可能性があり、ジョージアとEUの関係に「深刻な影響」を及ぼしかねないと警告を発した。
世論は西側接近を支持
米国務省のネッド・プライス報道官は、米政府は「ジョージアにおける事態の展開を注視して」いると述べ、「民主主義陣営との連携を強化し、欧州-大西洋地域の一員となり、より輝かしい未来を目指すジョージアの人々の重要な権利の一部を奪う恐れがある」として、問題の法案に「深い懸念」を表明した。
「この法案は極めて重大な後退であると、われわれは見ている」と、プライスは述べた。「ジョージアの人々の熱意に逆行する動きだ。アメリカはジョージアの人々のパートナーであり続けようとしているが、この法案が通れば、それも不可能になる」
世論調査によれば、ジョージアでは西側との関係強化を支持する声が大多数を占める。昨年8月に実施された調査では、「西側寄り」の外交政策を支持する人は47%、「西側に接近しつつ、ロシアとも良好な関係を保つ」二股外交を支持する人は31%で、「ロシア寄り」に賛同する人は2%にすぎなかった。また、自国のEU加盟申請を支持する人は75%に上った。
だが政界のエリート層にとっては、問題はもっと複雑だ。彼らは1991年のジョージア独立以降も、政治的にも財政的にもロシア政府との強力なつながりを維持してきた。たとえば元首相で与党「ジョージアの夢」の創設者である実業家のビジナ・イワニシビリは、今も政界に大きな影響力を持っているとされている。
イワニシビリは、ソ連崩壊後のロシアで国有財産を売却して財を成した人物で、親欧米のミハイル・サーカシビリ元大統領とは対照的に、長年ロシアとの関係の正常化を模索してきた。サーカシビリは現在、職権乱用の罪で収監されているが、本人は自身に下された有罪判決について、政治的動機に基づくものだと主張している。
ジョージアは「親欧米から親ロシアへ」
ジョージアに拠点を置くシンクタンク「経済政策研究センター」の非常勤研究員であるショタ・グビネリアは、3月8日に米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」が開催したウェビナーの中で、ジョージア政府は「親欧米のふりをしてきたが、見かけと実際の政策の間には大きな隔たりがあり、公然と親ロシア、反欧米の政策を取るようになってきている」と述べた。
「そのことがはっきりしたのが、ロシアによるウクライナ侵攻だった」、ジョージア政府はウクライナを支持しなかった、とグビネリアは言う。「彼らが言っていること、やっていることは全て、ジョージア政府がロシアに同調していること、彼らには欧米の仲間になるつもりなどないことを示している」
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら