プーチンのおかげで誰もが気付いた、「核兵器はあったほうがいい」
DEATH BLOW TO NPT REGIME
こんなことが許されるなら、NPT公認の5核保有国(いずれも通常兵器のパワーでも世界の五指に入る大国だ)は好き勝手に、大した犠牲も払わずに自国の領土を拡大できることになる。
一方で国際法の効力を無邪気に信じ、「非核保有国」としてNPTに参加した諸国には何の対抗手段もない。
核は素敵なソリューション
2014年に始まったロシアのウクライナ攻撃は、じわじわとNPT体制を骨抜きにし、その結果としてロシア自身を含む加盟191カ国の安全を脅かしている。
これほど露骨に国際的な約束を破られたら、誰も約束など信じなくなる。核なき世界を目指そうという意欲はそがれ、逆に核兵器の取得や使用に意欲を燃やす国やテロ組織が増える。こうして、あらゆる国の安全が脅かされていく。
繰り返すが、ロシアによる今回のウクライナ侵攻を見れば核武装を目指す国は増える。それはなぜか。
そもそも、ロシアがウクライナを攻撃できたのは自国に核兵器があるからだ。一方でウクライナには侵略を抑止できる核戦力がなく、NPTによってその入手を禁じられている。もしもウクライナに核兵器があれば、プーチンもロシア軍の指導者たちも、あの国へ戦車を送り出すのをためらったはずだ。
NATOのような多国間安保同盟に加わっていない中小国は、今回の事態で次のような3つの教訓を学んだはずだ。
その1、核兵器はあったほうがいい(他国の領土を奪うにもいいし、他国に領土を奪われるのを防ぐにもいい)。
その2、核兵器を手放すのはよくない。
その3、条約だの覚書だのを信じてはいけない。たとえ世界中の国が批准し、法的拘束力を持ち、全ての大国が支持していても、そんなものは無意味だ。
そして誰もが、核弾頭や濃縮ウランを手放したウクライナ政府の愚を繰り返すまいと思ったはずだ。運よく核弾頭があれば絶対に手放さず、なければ何としても手に入れる。主権と領土を守るにはそれが一番だと、思ったに違いない。
今はまだ、ゼロから核兵器の開発を進めるのは難しい。だが何らかの技術革新があれば、あるいは誰かから買える可能性があれば、誰だって核武装を目指したくなる。隣に乱暴な国があり、そこに核兵器があり、あるいはその存在が疑われる場合はなおさらだろう。