最新記事

核戦力

中国の核戦力能力向上で何が起きる? 核軍拡競争・偶発的エスカレーションの危険性

2023年2月24日(金)11時35分
池上敦士(富士通総研 上級研究員、防衛技術協会 客員研究員)

中国の核戦力が米ロと均衡した場合、日本は厳しい安全保障環境にさらされる(写真はイメージ) Leestat-iStock.

<2035年には中国・人民解放軍の核戦力が米ロと並ぶ予測。核の盾を利用した通常戦力の活用が進む恐れ...不透明な状況で、日本が取るべき手は?>

米空軍高官が2025年の台湾有事の可能性を指摘したメモが流出するなど、米中対立は日々深刻化している。

日本においても2023~27年度の防衛予算の目安を43兆円とすることが昨年12月に閣議決定( 国家安全保障会議「防衛力整備計画」記載)され、対中抑止力の強化が急がれている。

台湾有事の可能性が叫ばれる中で、見落としてはならない1つの大きなポイントが、中国の核戦力の強化だ。

昨年11月に米国防総省が発表した中国の軍事能力についての報告書「2022 Report on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China」では、人民解放軍が2030年までに1,000発、2035年までに約1,500発の核弾頭を配備することが予測されている。

国防総省は2021年時点の人民解放軍による核弾頭配備数を約400発と分析していることから、約10年で倍以上に膨らむと見込んでいる。

一方、核大国である米国・ロシアの2022年時点の戦略核弾頭の配備数は1,644発・1,588発と分析されている。このことから、2035年に中国は米ロと同水準の核戦力を有するようになると考えられる。

これまで、米ロは2011年に発効した新戦略兵器削減条約(New Strategic Arms Reduction Treaty:New START)を通じて戦略核弾頭の配備数などを相互に制限してきた。

同条約は2021年2月に失効予定であったが、バイデン大統領とプーチン大統領の電話会談の結果、2026年2月まで延長されることが大筋合意された。一方、昨年11~12月に予定されていた米ロ二国間協議はロシア側から延期が通告 された。

また、今年2月21日には同条約の履行を停止するとの通告がロシア側から行われた。 プーチン大統領は履行停止の撤回はありうるとしているものの、2つの核大国の今後の方向性は不透明である。

■世界の核弾頭数(備蓄含む合計・2022年時点の推定数)

atsushiikegami-chart01.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英HSBC、ネルソン暫定会長が正式に会長就任 異例

ワールド

ハマスが2日に引き渡した遺体、人質のものではない=

ワールド

トランプ氏が台湾保証実施法案に署名、台湾が謝意 中

ワールド

中国新大使館建設、英国が判断再延期 中国「信頼損な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中