中国の核戦力能力向上で何が起きる? 核軍拡競争・偶発的エスカレーションの危険性
中国の核戦力が米ロと均衡した場合、日本は厳しい安全保障環境にさらされる(写真はイメージ) Leestat-iStock.
<2035年には中国・人民解放軍の核戦力が米ロと並ぶ予測。核の盾を利用した通常戦力の活用が進む恐れ...不透明な状況で、日本が取るべき手は?>
米空軍高官が2025年の台湾有事の可能性を指摘したメモが流出するなど、米中対立は日々深刻化している。
日本においても2023~27年度の防衛予算の目安を43兆円とすることが昨年12月に閣議決定( 国家安全保障会議「防衛力整備計画」記載)され、対中抑止力の強化が急がれている。
台湾有事の可能性が叫ばれる中で、見落としてはならない1つの大きなポイントが、中国の核戦力の強化だ。
昨年11月に米国防総省が発表した中国の軍事能力についての報告書「2022 Report on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China」では、人民解放軍が2030年までに1,000発、2035年までに約1,500発の核弾頭を配備することが予測されている。
国防総省は2021年時点の人民解放軍による核弾頭配備数を約400発と分析していることから、約10年で倍以上に膨らむと見込んでいる。
一方、核大国である米国・ロシアの2022年時点の戦略核弾頭の配備数は1,644発・1,588発と分析されている。このことから、2035年に中国は米ロと同水準の核戦力を有するようになると考えられる。
これまで、米ロは2011年に発効した新戦略兵器削減条約(New Strategic Arms Reduction Treaty:New START)を通じて戦略核弾頭の配備数などを相互に制限してきた。
同条約は2021年2月に失効予定であったが、バイデン大統領とプーチン大統領の電話会談の結果、2026年2月まで延長されることが大筋合意された。一方、昨年11~12月に予定されていた米ロ二国間協議はロシア側から延期が通告 された。
また、今年2月21日には同条約の履行を停止するとの通告がロシア側から行われた。 プーチン大統領は履行停止の撤回はありうるとしているものの、2つの核大国の今後の方向性は不透明である。
■世界の核弾頭数(備蓄含む合計・2022年時点の推定数)