最新記事

米政治

「習近平と立場を交換したい指導者などいない」中国をスルーした一般教書演説

What’s At Home Counts

2023年2月13日(月)16時15分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)
バイデン

議会で一般教書演説に臨んだバイデン JACQUELYN MARTIN-POOL-REUTERS

<偵察気球を撃墜したばかりなのに、中国問題もウクライナ戦争もほとんど触れず。バイデンが国内の実績アピールに終始したのには理由があった>

国際問題にはほとんど触れなかった。ポピュリスト的な姿勢を貫き、保護主義を強調する国内向けのメッセージに終始した。

ジョー・バイデン米大統領が2月7日に行った一般教書演説は、そんなトーンだった。2024年の次期大統領選での再選を目指す事実上の出馬宣言とも受け取れた。

ほんの数日前にバイデンは、中国の偵察気球の撃墜を命じたばかり。それなのに中国の脅威や、その他の国際問題にはほとんど触れなかった。

72分間の演説は、消費者がいかに国内企業に搾取されているかという話が中心。薬代から飛行機の運賃、ホテルの宿泊代まで、中流層受けを狙ったようなトピックが続いた。

これはバイデンが「ブルーカラーのブループリント」と呼ぶもので、つまり「労働者層のための青写真」をきっちり描くことが再選のカギを握ると考えている。

しかし失業率は低水準なのに、インフレに賃上げが追い付かないせいで、一向に前に進まない。最近の世論調査でも支持率は低下。80歳になったバイデンの再出馬をめぐっては、民主党内からも不安視する声が上がっている。

演説の中でバイデンが中国の脅威と、ロシアのウクライナ侵攻に対するNATOの結束の必要性について言及したのは、演説の終盤になってから。中国に初めて触れたときは、演説を始めて1時間以上が過ぎていた。

230221p32_IPN_02edit.jpg

撃墜された中国の偵察気球 RANDALL HILL-REUTERS

トランプの主張を踏襲

バイデンは、アメリカが中国に求めるのは「衝突ではなく競争」だと主張。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がアメリカに代わって世界を主導しようとする努力は報われておらず、アメリカは既にその中国のかなり先を行っていると強調した。

「先週、(気球の撃墜で)明らかにしたように、中国がわが国の主権を脅かせば、私たちはアメリカを守るために行動する。実際、私たちはそうした」とバイデンは明言。専制政治は世界で弱体化しており、「習近平と立場を交換したい世界の指導者がいれば、名前を言ってほしい」と強い調子で語った。

しかし、話題はすぐに再び内政問題に戻った。バイデンとしては、外交政策でかなりの強硬姿勢を取ってきたことは有権者に評価されている、だからこそ国内での実績についてアピールする必要があると判断したのだろう。

バイデンは、ドナルド・トランプ前大統領から大部分を引き継いだポピュリスト的なメッセージ(自身はそう認めたくないだろうが)を改めて訴えた。

争点の1つは「メイド・イン・アメリカ」だと、彼は繰り返した。これはトランプが唱える「アメリカ第一主義」を受け継いでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中