「習近平と立場を交換したい指導者などいない」中国をスルーした一般教書演説
What’s At Home Counts
議会で一般教書演説に臨んだバイデン JACQUELYN MARTIN-POOL-REUTERS
<偵察気球を撃墜したばかりなのに、中国問題もウクライナ戦争もほとんど触れず。バイデンが国内の実績アピールに終始したのには理由があった>
国際問題にはほとんど触れなかった。ポピュリスト的な姿勢を貫き、保護主義を強調する国内向けのメッセージに終始した。
ジョー・バイデン米大統領が2月7日に行った一般教書演説は、そんなトーンだった。2024年の次期大統領選での再選を目指す事実上の出馬宣言とも受け取れた。
ほんの数日前にバイデンは、中国の偵察気球の撃墜を命じたばかり。それなのに中国の脅威や、その他の国際問題にはほとんど触れなかった。
72分間の演説は、消費者がいかに国内企業に搾取されているかという話が中心。薬代から飛行機の運賃、ホテルの宿泊代まで、中流層受けを狙ったようなトピックが続いた。
これはバイデンが「ブルーカラーのブループリント」と呼ぶもので、つまり「労働者層のための青写真」をきっちり描くことが再選のカギを握ると考えている。
しかし失業率は低水準なのに、インフレに賃上げが追い付かないせいで、一向に前に進まない。最近の世論調査でも支持率は低下。80歳になったバイデンの再出馬をめぐっては、民主党内からも不安視する声が上がっている。
演説の中でバイデンが中国の脅威と、ロシアのウクライナ侵攻に対するNATOの結束の必要性について言及したのは、演説の終盤になってから。中国に初めて触れたときは、演説を始めて1時間以上が過ぎていた。
トランプの主張を踏襲
バイデンは、アメリカが中国に求めるのは「衝突ではなく競争」だと主張。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がアメリカに代わって世界を主導しようとする努力は報われておらず、アメリカは既にその中国のかなり先を行っていると強調した。
「先週、(気球の撃墜で)明らかにしたように、中国がわが国の主権を脅かせば、私たちはアメリカを守るために行動する。実際、私たちはそうした」とバイデンは明言。専制政治は世界で弱体化しており、「習近平と立場を交換したい世界の指導者がいれば、名前を言ってほしい」と強い調子で語った。
しかし、話題はすぐに再び内政問題に戻った。バイデンとしては、外交政策でかなりの強硬姿勢を取ってきたことは有権者に評価されている、だからこそ国内での実績についてアピールする必要があると判断したのだろう。
バイデンは、ドナルド・トランプ前大統領から大部分を引き継いだポピュリスト的なメッセージ(自身はそう認めたくないだろうが)を改めて訴えた。
争点の1つは「メイド・イン・アメリカ」だと、彼は繰り返した。これはトランプが唱える「アメリカ第一主義」を受け継いでいる。