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ウクライナ戦争

熱湯の食事を「2分で食え」、缶詰のような収容所...ウクライナ人捕虜、飢餓・拷問・洗脳の実態

HUNGER IS A RUSSIAN WEAPON

2023年1月17日(火)21時35分
マイケル・ワシウラ(本誌記者)

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笑顔を見せる帰還兵たち(昨年9月) PRESS SERVICE OF THE STATE SECURITY SERVICE OF UKRAINE-REUTERS

エピファノワの団体はウクライナ人捕虜の窮状を訴え、捕虜全員の交換に力を入れるよう、ゼレンスキー政権に訴えている。

「捕虜交換があると、マスコミは大々的に報じる。あっちで30人、こっちで50人とかね。それで世間の人は、よかったと思う。でも全体では1万人も捕まっている。こんなペースじゃ、全員の解放までに何十年もかかるでしょう」

国に代わって家族が調査

ドミトロもそうだが、エピファノワも国際社会の対応には失望している。

「国際機関は何もしない。国連の担当者にも会ったが、何の役にも立たなかった」と手厳しい。

「その人は言った。『私たちは人権侵害を監視し、その情報を公開している。それがロシア政府への圧力になる』って。冗談でしょう。今のロシア政府が、国際的な評判なんて気にするわけがない」

ゼレンスキー政権にも、この問題を優先する余裕はなさそうだ。敵と戦い、生活インフラへの無差別攻撃に対処し、膨大な数の避難民の暮らしを支え、国際社会に支援の継続を求めるだけで精いっぱいだ。

だから捕虜の置かれた状況に関する基本的な調査も、捕虜の家族・親族が行うしかない。

エピファノワは言う。

「私たちはロシアのウェブサイトやテレグラムの書き込みを丹念に調べ、情報を探っている。帰還兵には、どこで誰の姿を見たか、誰が無事でいるかを尋ねる。その情報を、私たちが政府に伝える」

外交による急転直下の解決が望めないなか、捕虜の家族・親族は必死の思いで夫や息子、父や兄弟、いとこや友人・知人の窮状を訴え続けている。

その1人がアナスタシアという女性。昨年3月、夫がマリウポリで捕虜になったという。

「夫のアルトゥールは上級曹長で、朝は5時起きして、全身全霊で任務に取り組むタイプだった」とアナスタシアは言う。

「連中がここへ入るのは許さないと頑張っていたが、最後にはやられた」

開戦直後の時期、アルトゥールの所属する第501大隊はマリウポリにあるアゾフマシュ製鉄所に陣取っていた。しかし同じ市内のアゾフスターリ製鉄所と違い、そこには持久戦の備えがなかった。

食料や水の備蓄もなく、弾薬は最小限、地下トンネルも、衛星経由のネット接続もなかった。それでも265人の兵士は1カ月以上も踏ん張った。

「ネットで外界とつながっていたから、アゾフスターリの攻防は有名になった。でも、マリウポリで戦った英雄はほかにもいたの」とアナスタシアは言う。

「私の夫は小麦粉と水だけで生き抜いた。絶え間ない砲撃を受け、睡眠は1日3時間。それでも彼は、なんとか電波を捉えて私に電話してきた。ほんの2~3分だけど、私の無事を確かめるために」

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