最新記事

中国軍事

米中軍事競争の盲点、元米海兵隊員が中国軍の軍事顧問に

Ex-Marine Wanted by U.S. for Training China's Pilots in Carrier Operations

2023年1月4日(水)17時05分
ジョン・フェン

日本の自衛隊が捉えた中国空母「遼寧」の姿(2021年4月4日) Joint Staff Office of the Defense Ministry of Japan/HANDOUT via REUTERS

<中国軍に空母艦載機の離発着訓練を施し、8万ドルの報酬を得ていたとして、米海兵隊の元エリートパイロットが米当局への身柄引き渡しに直面>

中国軍パイロットの空母離着艦訓練を手助けしたとして2017年にアメリカで起訴された米海兵隊の元パイロットが、移住先のオーストラリアからの身柄引き渡しに直面している。

この人物はダニエル・ダガン(54)。現在はオーストラリアに帰化している。アメリカの裁判所が12月に公開した文書によれば、ダガンは2010〜2012年にかけて確認されているだけでも3回にわたり、「(中国軍の)パイロットに軍事訓練を実施した」という。

訓練は中国に進出している南アフリカのパイロット養成学校を介して行われた。裁判所の文書によれば、この学校は「海軍航空機に関する(NATOの)基準に即した知識と経験がある」複数の教官を雇用。中国や南アフリカなどに訓練所を置いていた。

起訴状によれば、ダガンが提供した訓練には「軍のパイロット訓練生の評価や海軍機関連の装備のテストの他、戦術やノウハウ、海軍の航空母艦からの離着陸関係の手順に関する教育が含まれていた」という。

またダガンは同じ時期に、中国のパイロットに対する「能力向上訓練」などへの報酬として12回にわたり、合わせて約8万ドルの支払いを受けていたとされる。米検察はこれを、中国への武器輸出や防衛関連業務の提供を禁じた法律の違反にあたるとみている。

「子供も一生楽に暮らせる」とメール

ダガンは中国国籍のとある人物と直接交渉し、この人物が経営する中国企業から支払いを受けていたという。業務契約を交渉していた2012年に中国で、ダガンは「(契約を結べば)子供たちとも一生楽に暮らしていけるのではと考えている」とする電子メールを書いている。

ダガンは1989年から2002年まで米海兵隊のパイロットを務めた。家族によればその後、オーストラリアに移住し、2012年に同国に帰化したという。

裁判所の文書によれば、米国務省は2008年にダガンに対し、外国のパイロット相手の訓練を行いたければ事前に文書で認可申請を行うよう電子メールで求めている。ダガンには共犯者が8人おり、中でも米海軍の元士官1人と戦闘機パイロット1人は問題の中国軍パイロットへの訓練にも関与していたという。

「ダガンも共犯者たちも誰1人として、外国籍の人々に軍事関連業務を提供するのに必要な認可をアメリカ政府に申請していなかった」と起訴状には書かれている。

リンクトインのダガンのプロフィールからは、彼がこの10年ほど、中国における航空関連ビジネスに関心をいだいていたことがうかがえる。ダガンは中国への軍事関連業務の提供の共謀やマネーロンダリングの共謀、そして武器の違法な輸出や売買の計4件で起訴されている。

ダガンの仲間が嘘の情報を使い、アメリカの海軍や海兵隊で使われていたのと同じ訓練機T-2バックアイを購入した疑いも持たれている。南アフリカのテスト飛行企業に使わせるためだったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 6
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 9
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中