日本人が知らない、少年非行が激減しているという事実
だが、こういう事実は国民の間に知られていない。2015年に内閣府が実施した世論調査によると、20歳以上の国民の78.6%が「非行は増えていると思う」と答えたという。こうした誤認は高齢層ほど多い。各年齢層の回答比率を当該年齢人口にかけて、事態を見誤っている人の実数を推し量り、人口ピラミッドの上で色をつけると<図2>のようになる。
ご覧のように、事態の誤認が広がっているのが一目瞭然だ。突発的な事件をセンセーショナルに報じるメディアの罪もあるだろう。怖いのは、このような歪められた世論に押されて教育政策が決まることだ。2015年の学習指導要領一部改訂で道徳が教科になったが、どういうエビデンスに基づいていたのかは定かでない。
<図2>のような社会では、何か事が起きるたびに「学校は何をしているのだ」「学校で○○教育をすべき」などと安易に言われたりする。逆ピラミッドの年齢構成で、時間を持て余した(高齢の)「道徳企業家」もはびこりやすい。このようなことも、教員の過重労働をもたらしている。言わずもがな、教育はあらゆる問題を解決する万能薬ではない。
各種のメディアが発達した社会では、こういう落とし穴があることに注意しなければならない。少年非行の現実と認識の乖離(ズレ)は、それを教えてくれる格好の題材と言っていい。