最新記事

韓国

「ノージャパンが吹き荒れた国なのか?」 韓国でふたたび日本食ブームの兆し、日本ビールの輸入も急増中

2022年11月2日(水)16時50分
佐々木和義

韓国のデパートやスーパーにはふたたび日本ビールが人気となっている...... 撮影:佐々木和義

<「ノージャパン」運動はどこへ? 韓国のデパートやスーパーにはふたたび日本食や日本ビールが並べられ、日本料理店は利用客で溢れかえっている......>

韓国関税庁の輸出入貿易統計によると2022年第1四半期から第3四半期の日本ビール輸入量は1万3198トンで、2020年の年間輸入量6489トンの倍以上、昨年1年間の輸入量7751トンを70.2%上回っていた。輸入額も20年の5668ドルを81.2%、昨年の7750ドルを32.5%上回った。

半年で4万トンを輸入した日本製品不買運動前とは比べものにならないが、3次日本食ブームの兆しを見せた2012年の1万9126トンに迫る勢いだ。

日本製品不買運動まで日本ビールは人気だった

韓国人が日本のビールを飲むようになったのは居酒屋ブーム只中の2008年頃からである。日本酒と日本食を提供する店はイザカヤと呼ばれて、雨後の筍にように広がった。イザカヤが提供したアサヒビールが人気となり、また、スーパーやコンビニはアサヒに加えて、サッポロやキリン、サントリーを販売した。
日本ビールは2009年から日本製品不買運動が拡散する前の2019年上半期まで、韓国の輸入ビール市場で首位を独走し続けた。

2011年、東日本大震災に伴う福島原発事故が起きると、日本の食品は放射能に汚染されているという風評が広がって多くのイザカヤが廃業し、日本ビールも落ち込むかに見えたが、サッポロビールを輸入していた毎日牛乳の子会社がコンビニエンスストアと共同で350ミリ缶を4本セット1万ウォン(約700円・当時)で販売するキャンペーンを行った。

4本セット1万ウォンの販売は、当初、週1回の限定だったが、キリンビールを輸入するハイト眞露とサントリーを輸入するOBビールも追随して、日本ビール4本セット1万ウォンが常態化した。

韓国でビールの消費が増えたのは1988年のソウル五輪の頃からだ。ハイト(現・ハイト眞露)は1993年に「ハイト」を発売、OBビールは94年に「カス」を発売した。

韓国ではビールと焼酎を混ぜて飲む爆弾酒が人気で、韓国語で焼酎を意味する「ソジュ」とビールを意味する「メクチュ」を合わせて「ソメク」と呼ばれている。大手2社はソメクに合うビールを販売するが、薄くてまずいという韓国人は少なくない。

不買運動でユニクロとアサヒビールが標的にされた

日本ビールがソメク文化に変化をもたらした。2013年2月末、島根県の竹島の日式典に反対した商工団体が日本製品不買運動を宣言して消費者にも賛同を呼びかけたが、不発に終わった。薄い韓国ビールではなくコクがある日本ビールを飲みたいという消費者が少なくなかったことが不発に終わった要因のひとつと言われたほど、日本ビール愛好者が増えていたのだ。

2019年7月、日本政府が韓国向け輸出管理を強化すると、韓国で日本製品不買運動が拡散し、なかでもユニクロとアサヒビールが標的にされたが、韓国人がアサヒビールの代わりに選んだのは、中国の青島ビールやオランダのハイネケン、ベルギーのステラ・アウトワなどだった。日本ビールに代わる輸入ビールが流通していたことが、不買運動が拡散した要因にあったといえるだろう。

「ノージャパン」で恩恵を享受したビールもある。ロッテグループは日本で知られる「鏡月」を製造していた斗山グループの酒類事業を買収した後、2015年に日本ビールをベンチマークした「クラウド」を発売した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米政権がロス市提訴、ICE業務執行への協力制限策に

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値更新、貿易交

ワールド

G7外相、イスラエル・イラン停戦支持 核合意再交渉

ワールド

マスク氏、トランプ氏の歳出法案を再度非難 「新政党
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中