最新記事

ソ連崩壊

ゴルバチョフはウクライナの独立に反対し、クリミア併合を支持した

How Mikhail Gorbachev Resisted Before Accepting Ukraine Independence

2022年9月1日(木)19時31分
ジェイク・トーマス

1985年にジュネーブで行われた米ソ首脳会談は冷戦終結への転換点となったが(ゴルバチョフ<左>とレーガン元米大統領) REUTERS

<外交では西側に近づき、国内では改革を進めたゴルバチョフだが、ソ連邦の崩壊は誤算だった。なかでもウクライナの独立だけはあってはならないと思っていたという>

旧ソ連最後の指導者ミハイル・ゴルバチョフの生前の功績がたたえられるなか、ウクライナに対するその矛盾した姿勢にも注目が集まっている。ゴルバチョフはウクライナの独立をしぶしぶ受け入れたが、後年その判断は「誤り」だったと述べていた。

8月30日に91歳で死去したゴルバチョフは東西冷戦を終結に導いた功績で知られ、訃報をきっかけにその政治的レガシーを見直す動きが広がっている。長年ロシアの支配下にあったウクライナが1991年に独立を宣言したとき、ゴルバチョフはソ連の指導者だった。「帝国の復活」を目指すロシアがウクライナを再び支配下に置こうとしている今、ウクライナのソ連邦からの離脱に彼がどう対応したかが改めて問われている。

ゴルバチョフはソ連共産党の書記長として一連の改革を進め、ソ連の最初にして最後の大統領を務めた。西側諸国との関係改善に取り組み、国内では政治的にも経済的にも中央政府の統制を緩めたが、結果的にはその政策がソ連崩壊に拍車をかけることになった。

ウクライナ独立は「自殺に等しい」

BBCの安全保障担当記者フランク・ガードナーはツイッターで「旧ソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフが91歳で亡くなったとの報に、その功績が改めて思い起こされる」と、哀悼の意を述べた。「彼の指導下でソ連が崩壊し、多くの自由な独立国が生まれた。ウクライナもその1国だ。1987年に私がモスクワを訪れたときには、彼が主導したペレストロイカ(改革)で既にロシアは変わりつつあった」

ボリス・ジョンソン英首相もゴルバチョフの功績をたたえ、「ソ連社会の開放を目指すそのたゆまざる献身は、今もわれわれ全ての手本である」とツイートした。

その一方で、ソ連崩壊はゴルバチョフの本意ではなく、とりわけウクライナの連邦離脱には最後まで抵抗し、ウクライナの人々の意思に逆らってまで止めようとした、とも指摘されている。

実際、2016年のインタビューでゴルバチョフは、改革の後は、生まれ変わった連邦を維持するつもりだったと述べている。

英王立統合軍事研究所の研究員サムエル・ラマニによると、ゴルバチョフは当時のジョージ・ブッシュ(父)米大統領にウクライナの独立要求は「自殺に等しいナショナリズム」だと警告したという。ブッシュはそれを受けて、ウクライナの首都キーウ(キエフ)で1991年に行った演説で、ゴルバチョフの改革をたたえ、「自由すなわち独立ではない」とウクライナの人々に釘を刺した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英アストラゼネカ、中国に150億ドル投資 スターマ

ワールド

米ウェイモの自動運転車、小学校付近で児童と接触 当

ワールド

独首相、ルールに基づく国際秩序強調 「関税の脅しに

ビジネス

中国、不動産業界締め付け策撤廃と報道 関連銘柄急伸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 4
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    人民解放軍を弱体化させてでも...習近平が軍幹部を立…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中