最新記事

ソ連崩壊

ゴルバチョフはウクライナの独立に反対し、クリミア併合を支持した

How Mikhail Gorbachev Resisted Before Accepting Ukraine Independence

2022年9月1日(木)19時31分
ジェイク・トーマス

「ゴルバチョフは最終的にウクライナの独立を受け入れたが、ロシアとウクライナが密接な関係を保ち、地域的な枠組みを通じて統合を維持することを望んでいた」と、ラマニはツイッターで述べている。

80年代にソ連が超大国の地位から転落し始めると、連邦を構成する共和国は次々に自治権の拡大を要求。ゴルバチョフは民主化された連邦にとどまるよう共和国の指導者に訴えた。なかでも重視したのがソ連最大の共和国だったウクライナを引き止めることだ。「ウクライナ抜きの連邦など想像できない」と、彼は1991年10月に米紙ワシントン・ポストに語っている。

必死の訴えの甲斐もなく、ウクライナは同年12月、独立の是非を問う住民投票を実施。圧倒的多数の支持によりソ連邦からの独立を宣言した。

「昨夜、最悪の帝国として世界史にその名を刻むであろう連邦が終焉を迎えた」と、ウクライナの作家で国会議員でもあったウォロディミル・ヤボリフスキーは住民投票の翌日にロセンゼルス・タイムズに述べた。

連邦維持に執念を燃やすゴルバチョフは、住民投票の結果を軽視し、ウクライナには改革で生まれ変わった連邦に再加盟する道が開かれていると主張したと、同紙は伝えている。

ウクライナは入国禁止に

「ソ連崩壊はゴルバチョフの考えではなく、望みでもなかったことは明らかで、最終的に負けを認めて受け入れざるを得なかっただけだ」と、BBCのウクライナ駐在記者のミロスラワ・ペスタは断じている。「ロシア人の大多数が彼を嫌っているのはそのためだ。最近まで彼はロシアの熱烈な擁護者だったが、ウクライナ戦争で宗旨替えし(ロシアの侵攻に批判的な立場をとった)」

1991年12月の住民投票後も、モスクワはクリミア半島の帰属については問題が残っていると主張した。クリミアは第2次世界大戦後にソ連当局によってウクライナ共和国の一部とされた経緯があるからだ。

ゴルバチョフは2013年にBBCに、ソ連崩壊は「クーデター」によるもので、「犯罪」にほかならないと語った。

さらに2014年にロシアが武力でクリミアを併合した際には、国際社会の激しい非難にもかかわらず、ゴルバチョフはこの動きを支持した。

「クリミアはソ連の法律に基づいて、ウクライナに編入された。つまり住民の意見を聞かずに、(共産党の)法律でウクライナの一部になったのだが、今回(住民投票が実施されて)住民の意思でこの過ちが正された」──ゴルバチョフはそうモスクワ・タイムズに述べたのだ。

米ロの対話継続を訴えていたゴルバチョフだが、こうした発言により、2016年にウクライナ政府から5年間の入国禁止にされた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB0.25%利下げ、3会合連続 3人が決定に反

ビジネス

FRBに十分な利下げ余地、追加措置必要の可能性も=

ビジネス

米雇用コスト、第3四半期は前期比0.8%上昇 予想

ワールド

米地裁、トランプ氏のLAへの派兵中止命じる 大統領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中