インフレ加速で深刻化するアフリカの「生理の貧困」 学校諦める生徒も
医療専門家や慈善団体は、インフレの加速というグローバル規模の問題により、多くのアフリカ諸国で生理用ナプキンのコストが上昇しており、多くの少女が学校を休むか、感染症や不妊につながりかねない非衛生的な代替品に頼るようになっていると指摘する。写真はケニアのナイロビで2021年7月撮影(2022年 ロイター//Thomas Mukoya)
ガーナの学校に通うジュリエット・オポクさんは、制服に付いた血をからかわれたことを機に、毎月1週間ほど学校を休むようになった。農業に従事する両親には、生理用ナプキンを買い与える余裕がなくなってしまったからだ。
西アフリカに位置するガーナでは、インフレ率が約32%に達し、生理用ナプキンの価格は12ガーナセディ(約165円)と、昨年の5ガーナセディから2倍以上に上昇した。オポクさんのようなより貧しい世帯では、生理用品よりも食料の購入を優先せざるをえない。
ガーナ南部アシャンティ地方で暮らす15歳のオポクさんは、トムソン・ロイター財団の電話取材に対し、「制服が血で汚れて、男子たちにからかわれたので、学校をサボった。自尊心が傷つけられた」と語った。
「生理用ナプキンはとても高い。生理の時は、代わりにトイレットペーパーや幼児用オムツ、布を使うこともある」とオポクさんは言う。将来の夢は看護師だ。
医療専門家や慈善団体は、インフレの加速というグローバル規模の問題により、多くのアフリカ諸国で生理用ナプキンのコストが上昇しており、多くの少女が学校を休むか、感染症や不妊につながりかねない非衛生的な代替品に頼るようになっていると話している。
女性・少女の人権推進に取り組むアクションエイド・インターナショナルの調査によれば、今年4月時点での生理用ナプキン1パックの価格は、1月と比較して、ジンバブエでは117%、コンゴ民主共和国では50%上昇した。
複数の慈善団体は、この状況はアフリカで生活する数百万人の少女にとって辛い結果をもたらしかねないと指摘。彼女らの教育や健康、尊厳に影響し、年長の男性との取引による性行為につながり、最終的にはジェンダー格差の拡大に至るとしている。
「価格の上昇が続くなかで大きな懸念は、女性たちが医薬品や衛生用品など健康に関わる出費を控え、家族を養うための食料その他の購入を優先してしまうことだ」と語るのは、カトリック救援事業会のスガニャ・キンブロー氏。
東アフリカ地域のプログラム品質を担当するキンブロー氏は、「学校に通う少女や、生計を支えている女性にとって極めて大きな影響が生じかねない」と述べ、食事の回数を減らしたり、家畜を売って家計の足しにしている世帯もある、と説明する。
教育、健康へのリスク
生理に関する情報や製品、女子トイレへのアクセスが不十分な状態としてしばしば定義される「生理の貧困」は、サハラ砂漠以南(サブサハラ)のアフリカにおける多くの地域で広く見られる。スティグマ(不名誉)を味わうことで、少女たちは授業を欠席し、完全に退学してしまうこともある。
ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が支援する調査によれば、ケニアでは女性・少女の65%が生理用ナプキンを購入できず、村落地域の学校では、女子生徒らがナプキンを交換する際にプライバシーを保てるトイレなどの設備があるのは32%にとどまっている。