最新記事

女性問題

インフレ加速で深刻化するアフリカの「生理の貧困」 学校諦める生徒も

2022年8月21日(日)10時48分
ケニアの女子学生の足元

医療専門家や慈善団体は、インフレの加速というグローバル規模の問題により、多くのアフリカ諸国で生理用ナプキンのコストが上昇しており、多くの少女が学校を休むか、感染症や不妊につながりかねない非衛生的な代替品に頼るようになっていると指摘する。写真はケニアのナイロビで2021年7月撮影(2022年 ロイター//Thomas Mukoya)

ガーナの学校に通うジュリエット・オポクさんは、制服に付いた血をからかわれたことを機に、毎月1週間ほど学校を休むようになった。農業に従事する両親には、生理用ナプキンを買い与える余裕がなくなってしまったからだ。

西アフリカに位置するガーナでは、インフレ率が約32%に達し、生理用ナプキンの価格は12ガーナセディ(約165円)と、昨年の5ガーナセディから2倍以上に上昇した。オポクさんのようなより貧しい世帯では、生理用品よりも食料の購入を優先せざるをえない。

ガーナ南部アシャンティ地方で暮らす15歳のオポクさんは、トムソン・ロイター財団の電話取材に対し、「制服が血で汚れて、男子たちにからかわれたので、学校をサボった。自尊心が傷つけられた」と語った。

「生理用ナプキンはとても高い。生理の時は、代わりにトイレットペーパーや幼児用オムツ、布を使うこともある」とオポクさんは言う。将来の夢は看護師だ。

医療専門家や慈善団体は、インフレの加速というグローバル規模の問題により、多くのアフリカ諸国で生理用ナプキンのコストが上昇しており、多くの少女が学校を休むか、感染症や不妊につながりかねない非衛生的な代替品に頼るようになっていると話している。

女性・少女の人権推進に取り組むアクションエイド・インターナショナルの調査によれば、今年4月時点での生理用ナプキン1パックの価格は、1月と比較して、ジンバブエでは117%、コンゴ民主共和国では50%上昇した。

複数の慈善団体は、この状況はアフリカで生活する数百万人の少女にとって辛い結果をもたらしかねないと指摘。彼女らの教育や健康、尊厳に影響し、年長の男性との取引による性行為につながり、最終的にはジェンダー格差の拡大に至るとしている。

「価格の上昇が続くなかで大きな懸念は、女性たちが医薬品や衛生用品など健康に関わる出費を控え、家族を養うための食料その他の購入を優先してしまうことだ」と語るのは、カトリック救援事業会のスガニャ・キンブロー氏。

東アフリカ地域のプログラム品質を担当するキンブロー氏は、「学校に通う少女や、生計を支えている女性にとって極めて大きな影響が生じかねない」と述べ、食事の回数を減らしたり、家畜を売って家計の足しにしている世帯もある、と説明する。

教育、健康へのリスク

生理に関する情報や製品、女子トイレへのアクセスが不十分な状態としてしばしば定義される「生理の貧困」は、サハラ砂漠以南(サブサハラ)のアフリカにおける多くの地域で広く見られる。スティグマ(不名誉)を味わうことで、少女たちは授業を欠席し、完全に退学してしまうこともある。

ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が支援する調査によれば、ケニアでは女性・少女の65%が生理用ナプキンを購入できず、村落地域の学校では、女子生徒らがナプキンを交換する際にプライバシーを保てるトイレなどの設備があるのは32%にとどまっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、政策調整でためらいや先回りはせず=レーン専

ワールド

ロシア、経済スパイ理由に外交官追放 英外務省反発

ワールド

高市首相、赤沢氏を重要物資安定確保担当相に任命 対

ワールド

スペイン、米軍機の領空通過を拒否 対イラン攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中