最新記事

女性問題

インフレ加速で深刻化するアフリカの「生理の貧困」 学校諦める生徒も

2022年8月21日(日)10時48分

国連の推計では、サブサハラ・アフリカ地域の少女の1割が生理中は学校を休んでおり、累計では最大で授業日数の20%に達する場合があるとされる。

こうした少女たちが学校を無事に卒業するとしても、同年代の男子生徒に比べて成績面で後れを取る可能性が高く、進学実績における既存の格差が拡大しかねない、と活動家らは語る。

また医療専門家によれば、生理用品を入手できない少女たちが紙やボロ布、草の葉、下手をすれば乾燥した牛糞など間に合わせの代用品を使うと、生殖器官や尿路への感染を伴う病気にかかるリスクがあるという。

公衆衛生分野の啓発に取り組むアニタ・アサモア氏は、「布を使うと、一般的な細菌による感染症にかかる場合がある」と話す。

「適切に治療しなければ、そうした感染症が骨盤内炎症性疾患や不妊症につながっていく」

骨盤内炎症性疾患は、子宮、卵管、卵巣に生じる感染症で、妊娠が困難になったり、卵管における子宮外妊娠の確率が増大したりする場合がある。

生理用ナプキンの費用がないために、年長の男性との性行為に走り、依存と搾取のサイクルにはまってしまう少女もいる。望まない妊娠や、低年齢での出産に至るケースもある。

国連人口基金(UNFPA)と協力してガーナで青少年の性的健康問題に取り組むアジョア・ニャンテング・イェンイ氏は、「生理用ナプキンと引き替えに、男性が少女らを取引的な性的関係に誘っている」と述べた。

「多くの少女が若さゆえに犠牲となり、想定外の妊娠に至っている」

ケニア医学研究所と米疾病対策センター(CDC)がケニア西部の農村地域で行った共同調査では、調査対象となった15歳の少女のうち10%が、生理用品を入手するために男性と性的関係を持っていた。

生理用ナプキンはぜいたく品

活動家らはアフリカ諸国に対し、生理用品に対する税金(西側諸国では俗に「タンポン税」と呼ばれる例が多い)を廃止し、入手しやすくすることを呼びかけている。だが、そうした措置をとったのはケニアやルワンダ、南アフリカなど少数の国に限られる。

ガーナでは、生理用ナプキンに20%の輸入関税に加え、12.5%の付加価値税を課している。ガーナ歳入庁では、生理用ナプキンをぜいたく品に分類している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中