最新記事

宇宙探査

NASAが「泳ぐ探査機」を発表 大量展開で生命の兆候を一挙取得へ

2022年7月19日(火)19時00分
青葉やまと

SWIMが目下念頭に置いているのは、木星の衛星であるエウロパや、土星の衛星のエンケラドゥスなどの探査だ。これらの惑星は氷で覆われた表面の下が液体で満たされており、遊泳型ロボットの強みを存分に発揮できる。

科学ニュースサイトのZMEサイエンスは、「数十年前であれば天文学者たちがこれらの世界(衛星)を重視することはなかったが、みかけ以上に可能性があることが近年の研究によって示唆されている」と説明している。

データの同時収集で、生命を探る「嗅覚」に

遊泳型のロボットにはさまざまな利点があるようだ。クライオボットは氷を溶かすために熱を放出するため、その周囲でデータを収集した場合、測定値が影響を受けるおそれがある。しかしSWIMの場合、小型ロボットたちが探査機から遠く離れた場所まで移動してから測定を行うため、人工的な熱の影響を受けることがない。

ロボットは群れとして自律的に行動し、データ収集に適した陣形に展開する設計だ。考案者のシャーラー氏によると、個々のロボットから寄せられたデータに勾配がみられた場合、エネルギー量や化学物質量の多い方に群れを進ませることで、原始的な生命を効率よく発見できるという。

宇宙の探査といえば、火星など惑星にスポットライトが当てられがちだ。だが、海をもつエウロパやエンケラドゥスなどの惑星は現在、太陽系内で原始的な生命が存在する可能性の最も高い場所だと考えられている。将来的にSWIMのロボットから、驚くようなデータが報告される日がくるのかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中