加熱する安保議論には、沖縄の人々をどう守るかという視点が欠けている
OKINAWA, VICTIM OF GEOGRAPHY
2010年には尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺海域で、違法操業を行っていた中国漁船が海上保安庁の巡視船2隻に衝突し、日本と中国の政府が対立した。2012年に日本政府は尖閣諸島を個人所有者から購入して国有化。これに対し、中国政府は領有権を示すために海警局の船を配備し、両政府の法執行機関が同じ海域を管轄する形になっている。
こうして東シナ海は日中の直接的な軍備競争の最前線となった。中国が海軍のプレゼンスを高めるにつれて、自衛隊も沖縄県でのプレゼンスを高めている。注目は、東シナ海に最も近い離島の基地を拡充していることだ。
与那国島にレーダー基地を設置し、宮古島にミサイル部隊を配備するなど体制を強化して、石垣島でも陸上部隊を増強している。さらに、航空自衛隊は那覇基地に配備するF15戦闘機隊を1飛行隊増やし、海上自衛隊は南方海域の防衛強化を念頭に潜水艦を増強している。
日本とアメリカは今、日本の領海内外で拡大する中国の軍事的プレゼンスを抑止することに注力している。陸上自衛隊に新設された水陸機動団は、米海兵隊から多くの訓練や研修を受けており、南西諸島の防衛を念頭に入れた合同演習も重ねてきた。
その一方で、米国防総省は、中国が武力によって台湾併合を強行しようとした場合のオプションについて、さらなる検討を進めている。
台湾有事は朝鮮戦争のような限定戦争ではなく、アメリカと中国がぶつかる超大国間の戦争に発展する恐れがある。その場合、アメリカは沖縄の基地や軍事施設の使用について日本の協力を必要とするだけでなく、自衛隊に米軍の戦闘部隊を援護してもらう必要がある。
そのとき、沖縄ほど、こうしたパワーダイナミクスの犠牲になりやすい地域はない。
沖縄をどうやって守るのか
台湾危機が勃発すれば、その近さゆえに、沖縄の軍事基地は日米の対応の中心となるだろう。この平時から危機への態勢シフトには、沖縄住民の支持と協力が不可欠になる。
第2次大戦後のほとんどの間、日米同盟における沖縄の役割は、その地理的・戦略的重要性に基づき論じられてきた。その政策論議の中心を成したのは、米軍基地をどこに配置するかや、住民の不満(と怒り)にどう対処するかだった。基地へのアクセスと、寸断のない使用は絶対確保する必要があると考えられた。
住民の多くは、なぜこうした基地をまとめてどこか別の場所に移転できないのかと問い掛けてきた。冷戦が終結したときは、世界の緊張緩和による「平和の配当」が沖縄にももたらされることを期待した。