ベルギー名産品チョコレートと植民地支配──現国王の謝罪、今後の役割とは?
RESTITUTION FOR THE CONGO
博物館は近年、拡張しリニューアルされたが、もともとのひんしゅくを買う設立趣旨の名残をとどめている。コンゴで命を落とした1000人ほどのベルギー人の名前が刻まれた壁はあるのに、彼らの野望を満たすために犠牲になったアフリカ人が桁違いに多いことには触れられていない。壁に彫られた彫像が部分的かつ巧みに隠されている場所もある。
ここには「ベルギーがコンゴに文明をもたらす」とか「ベルギーがコンゴに安全をもたらす」といったかつてのスローガンが彫られているのだ。
王立中央アフリカ博物館は彫像や仮面や絵画といったアフリカの文化財を多数、収蔵している。アフリカ諸国をはじめとするかつての植民地では、西側の帝国主義統治の下で文化財が盗まれたり不当に安く買いたたかれたりした。
こうした品々は今、本来の所有者であるアフリカの人々の手の届かない、遠くの博物館の展示ケースや倉庫の中にある。元植民地の国々は、これら文化財の返還を求める戦いを繰り広げている。
王立中央アフリカ博物館に言わせれば、コンゴに文化財を返還する用意はあるものの、貴重な品々を適切に保管する環境が整っていないという理由からコンゴ政府のほうが時間的猶予を求めているという。それならば、環境整備を手伝うことがベルギーの道義的義務ではないだろうか。
歴史的「負債」がない中国
オランダの研究者で、著書『不都合な遺産──オランダとベルギーにおける植民地コレクションと返還』を近く出版するヨス・ファン・ビュールデンによれば、ベルギーは旧植民地のコンゴやルワンダ、ブルンジからの求めに応じて文化財を返還する義務を認めてはいる。だがその対象は国家が保有するものに限られており、民間の博物館やルーベン・カトリック大学あるいは個人が所有するものには及ばないという。
ベルギーによる植民地経営はろくなものではなかったが、そもそもベルギーのような小国に、コンゴのような広大な領地をコンゴ側にも利益をもたらすような形で植民地化する力はなかった。現代においても同様に、コンゴの未来を明るい方向へと大きく動かすにはベルギーは小さすぎる。
ベルギーにやれること、そしてすべきことは、外交努力によってコンゴ再建計画への欧米諸国や国際機関の支援を取り付けることだ。1884~85年のベルリン会議で、アフリカ分割に向けてベルギーが中心的な役割を果たしたように。