最新記事

日本史

史実はNHK大河ドラマとまったく違う ── 源頼朝が弟・義経の死に際し実際にやったこと

2022年6月26日(日)18時29分
濱田 浩一郎(作家) *PRESIDENT Onlineからの転載

さらに最新の説では、頼朝と義経は対面していたとする見解が出てきています。

『平家物語』には出てきませんが、より古態を存する『延慶本 平家物語』には、2人が対面した様子が記されています。そこには「打ち解けた様子もなく、会話は少なかった」と書かれています。会うことは会ったが、気まずい雰囲気であったことは確かです。

2人の間には、明らかに緊張関係が生まれていたわけですが、その理由は、これまで見てきた義経の振る舞いにあったと言えましょう。

義経が鎌倉に対し挙兵した本当の理由

兄弟が会ったにしろ、会わなかったにしろ、義経は無事に京都に帰還していることから、頼朝と義経はこの時点では完全破局には至っていなかったことが分かります。完全破局していたならば、この時点で、頼朝は義経を捕縛または殺害したでしょう。

『吾妻鏡』には、鎌倉に入れてもらえず、京都に帰ろうとした義経(6月9日に東国をたつ)が「関東(頼朝)に恨みがある者は付いて参れ」と放言したと書いてあり、そのことが要因で、頼朝は義経に与えていた所領24カ所を没収したとされます(6月13日)。

しかし、義経が兄・頼朝に挙兵するのは、その年(1185年)の10月です。義経も6月の段階では、頼朝に対し、挙兵するほどの怒りは抱いていないのです。

義経が挙兵を決意した理由は『玉葉』(当時の貴族、九条兼実の日記)の10月17日の項目に書いてありますが、1つは前述の所領没収。2つ目は、10月に行われた刺客の派遣。3つ目は、伊予国に地頭が置かれて、国務を妨害されたことが挙げられています。

同年8月、義経は朝廷から伊予守(伊予国=現在の愛媛県の国守)に任命されていました(伊予守任命についても、4月に頼朝から申し入れがあったといわれます。頼朝は6月の時点では義経の伊予守任官を苦々しく感じていたでしょうが、朝廷との関係を重視する頼朝としては今更、任官をご破算にというわけにはいかなかったでしょう)。

刺客の問題は両者決裂後のことであるので、義経からすると、地頭を置かれて国務を妨害されたことが挙兵の大きな理由だったと思われます。

ルールを守らないことへの怒り

では、なぜこんな嫌がらせを頼朝は行ったのか。

本来、伊予守に任命されたら離任すべき検非違使(けびいし)に義経は留任していたのです(義経は1184年8月、検非違使に任官。木曽義仲や平家討伐の恩賞でした)。こうした人事は異例で、その背後には後白河法皇がいたとされます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ453ドル安 原油高と雇用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 2
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 3
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園で撮影された「恐怖の瞬間」映像にネット震撼
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 10
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中