最新記事

戦災

命がけの逃避行...その先でウクライナ難民たちを待っていた「避難生活」の苦難

NO WAY HOME

2022年5月18日(水)17時16分
デービッド・ブレナン

220517p27_NMN_03.jpg

キーウ近郊の町ボロディアンカはロシア軍の砲撃で大きな打撃を被った ALEXEY FURMAN/GETTY IMAGES

市当局は長期にわたって滞在する難民がどのくらいいるか把握できていないが、広報担当は「大半」がそうなるだろうと認める。新たに流入してくる難民は、いい仕事が見つかりそうな大都市に引き寄せられていると、クラクフ市ではみている。

戦後はさらに難民が増える

難民を受け入れる都市に共通する悩みは、どうやって環境になじんでもらうか。ウクライナの西部国境から80キロほどのポーランドのルブリン(人口34万人)でも、住民の統合が大きな課題だ。クリストフ・ジュク市長によれば、ルブリンには約3万人のウクライナ難民が暮らしている。

「ルブリンの暮らしに円滑に溶け込んでもらうような方策が必要だ」と、ジュクは言う。「避難してきた人たちの文化や多様性を尊重しつつ、彼らにはコミュニティーの重要な一員になってもらいたい」

いまルブリンにいる難民は、今後もとどまるだろう。「この町にいるのは、ほかに行く当てがない人や、事態が落ち着いて帰国するときのために国境の近くにいたい人などだ」と、ジュクは説明する。「あるいは、祖国の自由のためにウクライナに残って戦う夫や父親、息子の近くにいたくて、国境から離れたくないという人たちもいる」

戦闘が終われば、国外の難民はさらに増えるかもしれない。ロシア軍の侵攻後、ウクライナ政府は兵力確保のため18~60歳の男性の出国を禁止した。また国の呼び掛けに応じて、外国から多くの男女がウクライナに帰ってきた。

「やがてルブリンには、いま前線で戦うウクライナ人男性が合流する」と、市長のジュクは言う。「戦闘が終われば、ルブリンで暮らすウクライナ人は1万~2万人増えるだろう。定住する人も出てくる。この町で働き始めたり、学校に通うとなると、破壊されたウクライナに戻るのはますます難しくなる」

ウクライナのシンクタンク、ラズムコーウ・センターの3月の調査によると、難民の79%が戦闘が終わればウクライナに帰るつもりでいる。10%は国外にとどまる意向だ。

だが、帰るべき場所がなくなる人もいるだろう。民間人の居住地区の被害状況は正確に分からないが、荒廃の規模は第2次大戦後のヨーロッパで最も深刻なものかもしれない。

バレリヤ・ファデエワは、ウクライナの「国内避難民」。14年にポーランドに留学するためドネツクを離れたが、その後ドネツクがロシアの支援する分離主義勢力に占拠され、故郷に帰れなくなった。

最終的にキーウに移住したが、ロシアの侵攻でさらに西に追いやられた。侵攻から数週間後、ファデエワはキーウを出発する満員の列車に乗り込んだ。ロシア軍が迫り、ミサイルが町を揺らすなか、彼女はポーランド国境近くのリビウまで11時間、車内で立ったまま過ごした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府のAI責任者が辞任表明、大統領諮問委に移籍へ

ワールド

中国、生徒の学業負担軽減策を発表 過剰な宿題禁止な

ワールド

政府が石炭火力の稼働率引き上げ、1年限定 ホルムズ

ワールド

30日にG7財務相・エネルギー相・中銀総裁の合同会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 5
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 6
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 7
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 8
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中