最新記事

新型コロナウイルス

上海ロックダウンで「飢える」市民の叫び...なぜ、こんなに「無計画」だった?

Desperate in Shanghai

2022年5月10日(火)18時27分
トレイシー・ウェン・リウ(作家、ライター)

220517p30_SHI_03.jpg

住宅地内の消毒室に商品を置く配達員(5月1日) CHINA DAILYーREUTERS

シアン(同じく本人の希望で姓のみ)は3月30日に食料の買い出しに行き、少人数の家庭だから少なくとも10日間は大丈夫だろうと思っていた。だが取材した4月中旬の時点でも、店が営業を再開するなど食料が買える状況にはなっていなかった。シアンは2晩寝ないでいろいろなアプリを使って食料を購入しようとしたが、買えずじまいだった。

彼女は出回っているという「上海食料品購入ガイドライン」を見せてくれた。そこには「盒馬鮮生(フーマ)」「叮咚買菜(ディンドンマイツァイ)」「美団(メイトゥアン)」などの一般的な食品宅配アプリがリストアップされていた。「午前6時55分に盒馬のアプリを開いて、更新し続けなさい。午前6時に叮咚買菜のアプリを開けば、30分以内なら買える可能性あり。午前0時に美団のアプリをチェックしなさい」といった具合だが、どれもたいてい「開店」から数分で売り切れる。

期限切れの食材を調理

ある女性は匿名を条件に、1~2カ月前に期限が切れている食材を調理せざるを得ないと話した。「油も残りわずかで、ほんの少ししか使えない」という。彼女の住む集合住宅は3月17日からロックダウン。初めの頃はまだ街の大半は封鎖されておらず、宅配アプリを使って食料品や飲食店の料理を注文することができたが、状況は日に日に厳しくなっている。そのため食事を切り詰めざるを得ず、既に体重が2~3キロ減った。

市当局の計画性のなさが食料不足を招いていると、上海在住のヤン・チェンチュアンは指摘する。ニュースサイトやSNSを見ると、他の多くの省や都市から大量の食料や物資が上海に届いているが、いまだに住民への配送がうまくいっていないようだと言う。

ヤンの住む集合住宅がロックダウンされたのは3月上旬。限られた人数の公務員やボランティアが大量の新型コロナウイルス検査の手続き、住民への食料品などの配送、病気の隣人たちのための救急車の手配などをこなさなければならなかった。当初の数日間こそ食料品が届いたが、すぐにヤンや隣人たちは自分たちでどうにかして調達しなければならないことに気付いた。

宅配アプリは品切れが続出しているので、個別のサプライヤーを何とか見つけた。大量にまとめ買いすれば集合住宅の入り口まで配送してくれる。「配送条件は50袋以上なので金額は以前の約2倍になるが、払えない額じゃない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

クルド系勢力のシリア暫定政権合流、トルコが歓迎 安

ワールド

豪、米の鉄鋼アルミ関税に対抗措置取らず 首相「代償

ワールド

米教育省、職員の半数を一時帰休に トランプ大統領の

ワールド

米国抜きで軍幹部会合、西側諸国 ウクライナ停戦後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 8
    トランプ=マスク独裁は許さない── 米政界左派の重鎮…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中