日本は能力よりもジェンダーで所得が決まる社会
50歳前後になると男女の所得格差は驚くほど拡大する Aleksei Naumov/iStock.
<男女別、学歴別の所得分布を見ると、日本では学歴の高い女性でも男性より所得レベルが大幅に低い>
日本は学歴社会と言われる。富や地位の配分に際して学歴がモノをいう社会で、どの国も発展と共にこの性格を強めていく。響きはよくないが、学歴は当人の能力や努力の所産でもあるので、前近代のように「生まれ」で人生が決まるのと比べたら公正なシステムと言える。
だが学歴とて、100%フェアな競争の結果ではない。上級学校、とりわけ有力大学への進学チャンスが家庭環境に左右されるのはすっかり知れ渡っている。またあからさまな世襲と違い、参加の機会が開かれた競争の結果なので、糾弾すべき不平等が隠蔽されやすい。「能力主義の衣をかぶった属性主義」という言い回しがあるが、まさに言い得て妙だ。
さらに、同じレベルの教育を終えていても待遇が大きく異なるケースは多々ある。たとえば正規雇用と非正規雇用の差が取り上げられることが多いが、性別による違いも非常に大きい。筆者の年齢層(40代後半)の大卒有業者を取り出し、年間所得の中央値を男女別に算出すると男性が654万円、女性が260万円となる(総務省『就業構造基本調査』2017年)。同年齢の大卒でも、女性の稼ぎは男性の半分に満たない。
これは40代後半の大卒男女の比較だが、データを増やすと驚くべき事実が露わになる。<図1>は、4つの学歴グループの所得中央値を年齢層別に出し、線でつないだグラフだ。
男性で見ても女性で見ても、所得の中央値は学歴が上がるほど高くなる。だが注目すべきは性差で、同じ学歴で比べても男女の差が甚だ大きく、年齢が上がるにつれてその差は開いていく。女性では昇給がない。折れ線の高さをみると、男性の中卒と女性の大卒がほぼ同じであることも分かる。
これは働き方の違いのためで、女性は家計補助のパート就労が多く、就労調整をして意図的に稼ぎを抑えている人も多い。だが好きでそうしている人ばかりではない。当初は正社員だったが結婚・出産等で離職を強いられ、後から復職を望んでも叶わない。数としてはこういう人が多数で、今の状況に満足している人は多くないのではないか。社会にとっては、女性の高度な能力を活用できていないことの表れでもある。