最新記事

経済制裁

ロシア経済悪化の他国・地域への影響

2022年3月15日(火)14時05分
高山武士(ニッセイ基礎研究所)

ただし、「反作用」の定量評価としては過小評価である可能性が高い点に留意する必要がある。

例えば、マクロ経済理論では負の供給ショックは物価上昇と生産量の減少をもたらすとされる。冒頭でも少し触れた通り、すでに高インフレの影響は懸念されているが、今回はそうした影響を分析したわけではなく、2018年の経済構造(各国間の産業のつながり)を調べているにすぎない。金融取引(国際与信、対外直接投資など)が減少することによる影響も加味されていない。

他にも、コロナショックで明らかになったように、電線(ワイヤーハーネス)や半導体などの部品不足が自動車などの川下の最終財生産を止めてしまうことがある。自動車の価格(付加価値)から見れば不足部品の価格(付加価値)はごくわずかだが、途中の生産工程が止まり最終需要は急減しうる。つまり、供給不足の影響は川上の影響より川下の影響が大きくなっている可能性が指摘できるだろう。

最後の影響については、例えば供給網の上流に位置するほど下流の最終消費への影響度が増すとして、ウエイトを付けて計算すると図表5のようになる4(図表5)。ウエイトの付け方を変えれば影響度合いも変わるが、いずれにせよ欧州経済への影響は他国・地域よりも大きいことが示唆される。

nissai2022031423210305.jpg

nissai2022031423210306.jpg

ただし、これも冒頭で触れたが、経済・金融制裁によって産業連関構造が大きく変化し、例えば制裁国である西側諸国とのつながりは縮小する一方で、それ以外の地域、例えば中国などとのつながりはむしろ拡大する(ロシアからの供給が増える)といった変化が想定される点には留意する必要があるだろう。

────────────────
4 (上流度を加味した国・産業別の(1)の金額の列ベクトル)=(最終需要率の対角行列)×(ゴーシュ逆行列(の転置)の2乗)×(付加価値の列ベクトルのうちロシア分)として算出している。これは、(生産金額の列ベクトル)=(B)×(生産金額の列ベクトル)+(付加価値の列ベクトル)として、係数行列Bを定義し、単位行列IとBを用いて(ゴーシュ逆行列)=(I-B)-1となるようにBを定義すれば、((1)の金額の列ベクトル)=(最終需要率の対角行列)×「(I+B2+B3+B4+...)」×(付加価値の列ベクトルのうちロシア分)と変形できる。上流度を加味した(1)の金額の列ベクトルは「」の中身を(I+2B2+3B3+4B4...)とウエイトをつけたものになっている。


takayama0219.png
[執筆者]
高山 武士 (たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所
経済研究部准主任研究員

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

市場の投機的、異常な動きには打つべき手を打っていく

ワールド

米ミネアポリスで連邦捜査官が市民射殺 移民取り締ま

ワールド

米ロとウクライナの高官協議終了、2月1日に再協議へ

ワールド

トランプ氏、中国との貿易協定巡りカナダに警告 「1
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投稿したアメリカを嘲笑する動画にネット爆笑
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 6
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 7
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    「これは違法レベル...」飛行機で「史上最悪のマナー…
  • 10
    トランプを支配する「サムライ・ニッポン」的価値観…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 9
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中